こんにちは。
みなさんは学生時代何の教科が好きでしたか?
ぼくは理科です。
特に物理が好きです。
いまも気象学なんかの本は時々読みます。
熱力学や大気力学、流体力学など、ニュートンの古典力学をふんだんに使うので面白くてオススメです。
ニュートンの運動方程式ってのはホントに端的で素晴らしい式です。
3つの方程式を応用していくことで量子力学以外の物質の運動は説明できてしまうんだから。
逆に嫌いな教科はそれ以外の全部。
それでも学校のお勉強で苦労したことは一切ありませんが。
はじめに
さて、初っぱなから尊大な態度を取ってしまった。
ドラフトが終わってからどうしたものかと考えておりましたが、オフシーズンの間はフットボールのお勉強。
なんにしてもアカデミックに考える方が面白いもんね。
というわけで、「アカデミックフットボール」なるコーナーもつくってみよう思い立ったわけです。
最初はもっと簡単な話から始めようと思ったのですが、面白い話を海外サイトで見かけたので、オフェンスの戦術面について話そうと思います。
下記のリンクがそのサイトです。

ただ翻訳するだけではぼくのブログである意味が無いので、ぼくも紹介するオフェンスの特徴に合致するだろうと思うプレイを探して自分なりのプレイの見方を説明しようと思います。
いざ書いてみるとかなり時間がかかることが分かったので、3回に分けます。
初回はスプレッドオフェンスから。
英語が分かる人はリンクのサイトからほかのオフェンスも見といてください。
NFLのオフェンスの歴史
大昔の話はぼくも知りませんが、基本的な流れとしては「ラン重視→パスも混ざり始める→パス重視」というのが大まかな流れです。
ぼくがフットボールを見始めたのが2009年ごろ。
その時は確かチームによって戦術が全く違うということはなく、プレイブックなんかはほぼ共通だったと思います。
各プレイの呼び名が違っていたり選択の傾向に多少差がある程度だったはず。
要はアンダーセンターのセットバックにQBが位置してオーソドックスなランとパス、プレイアクションをプレイする、というのがその時代の主流。
ランはパワーやアイソ、カウンター、ゾーン、スイープなど高校生でも知ってるごくごく一般的なものだったと思います。
パスもシャロークロスやホイール、シザーズなど「Madden NFL」で使うプレイそのまんまでした。
流れが変わり始めたのは、2010年代ごろからでしょうか。
パス全盛の時代に入り、どんどんコーチによるスキームの違いが目立ち始めました。
特にカレッジフットボール的なスプレッドオフェンスというのがNFLでも増えてきたと思います。
アウトサイドゾーンを多用したり、RPO(ラン・パス・オプション)なるものが現れたり、ラジバンダリ。
その流れから現在に至るという感じです。
スプレッドオフェンス
定義
フォーメーション:ショットガンが基本でフィールドを広く使う
ラン:QBランやRPOなど、何かしらのオプションが組み込まれる
パス:クイックヒットかディープクロスのルートが多い
代表的なチーム
アリゾナ・カーディナルス
バッファロー・ビルズ
カンザスシティ・チーフス
特徴
このオフェンスの肝は、ディフェンスを散らばらせることです。
WRとTEを広めにセットさせることで、ディフェンダーはそれぞれのレシーバーにアジャストするために広がることになります。
ディフェンスが散らばると、キャリアーへのタックルは難しくなります。
密集したエリアより開けたエリアの方がタックルをかわすのが簡単なことは想像できると思います。
ランはインサイドゾーンやRPO、ゾーンリードなど選択肢が豊富なプレイが中心となります。
パトリック・マホームズ(Patrick Mahomes)やカイラー・マレー(Kyler Murray)、ジョシュ・アレン(Josh Allen)のような投げられて走れるQBにはうってつけのプレイをコールすれば、広がったディフェンスはさらに的を絞ることが難しくなります。
パスはクイックヒットかディープのクロスルートが主だったものです。
クイックヒットはランの代わりに使えます。
ラン・アフター・キャッチで少々のヤードを稼いでくれれば、それで良いのです。
ディープクロスはSのヘルプを減らすことが目的です。
5人のレシーバーがいて、うち4人がディープに走り込むルートだとします。
Sが2人ディープにいたとしても2人足りません。
特にフィールドを斜めに大きくクロスするルートは守り切ることが困難となります。
レシーバーがマンカバーのDBに1 on 1で勝てばその時点でロングゲインは確定です。
プレイ紹介-RPO
まずは動画のリンクから。
そしてアサインメント。

簡単にアサインメントの読み方を説明しておきます。オフェンスの選手は四角と丸で表し、ディフェンスはポジションの頭文字か三角で表すのが一般的です。
オプションの場合、丸に縦線が入っている選手がボールを持つ可能性のある選手として表します。
通常のランプレイであればボールキャリアーを黒く塗りつぶします。
LBについてはストロングサイドのLBをSam、MLBをMike、ウィークサイドのLBをWillと呼ぶことが多いです。
この場合、Willの代わりにNB(ニッケルバック)が入っているので、Nと書いておきます。
だからと言って役割が変わることはありませんが、DB登録の選手が入っているのでNBとします。
さて、やっと本題です。
オフェンスのそれぞれの役割から整理していきましょう。
フォーメーションは、スプレッドオフェンスで代表的な3 by 1(片方にレシーバーが3人、もう片方に1人の体型)のセットです。
まず、OLは全員ゾーンブロックなので、自分の右側のギャップを担当します。
RBはそのブロックについていくようにハンドオフを受けるようにスタートします。
右のレシーバー、今回はTEですが前のCBをブロックします。
そのほかのレシーバーは矢印のとおりのルートを走ります。
QBはRBにボールを入れるかレシーバーにパスを投げるかを選択します。
実際のプレイを見直してみましょう。

しれっとTEがCBを素通りさせていますがそれは置いておいて、黄色く丸をつけたLBがランに食いついています。
この反応を見たQBは、ランではなく左サイドの内側にセットしたWRへのパスを選択します。
後から気づいても時すでに遅し。
RPOとプレイアクションの最大の違いは、ランの可能性があるか否かです。
プレイアクションでも今回のアサインメントとほぼ同じものはあり、それでもLBにとっては守るのが難しいです。
加えてRPOとなると、RBが走る可能性もあるので、LBとしてはどちらかに腹を括らなければなりません。
普通、チームによってルールが決まっており、この場合はホワイトはセットした位置から動かないことが良いとされていると思います。
それでもこのプレイでバッカニアーズはNBとCBのダブルファイアを入れるというかなりの博打を打っているので、相性が悪すぎた。
普通2人もブリッツを入れるならマンカバーにすると思うけど、NFLにはこんなにルーズにカバーする方法もあるんだ。
では、ディフェンスはこの場合、どうすれば良かったのでしょうか?
正直なところプレイ選択の相性が悪すぎるので、ぼくならキャッチされることは仕方ないとしてすぐにタックルする、これで手打ちにします。
このディフェンスはそもそもパスを投げさせない、もしくはパスミスを誘うプレイです。
DB2人をダブルファイアに使うということは投げられる前にパスラッシュがQBに到達することを目的としているため、球離れが極端に早いRPOにはどうしようもない。
一発タッチダウンとならなかっただけよくやった方だと思います。
プレイ紹介-ディープクロス
お次はこちら。
続いてアサインメントを。

おおざっぱに描くとこんな感じ。
OLはパスプロ、QBはショットガンから5歩ドロップバックしています。
この場合、7歩のパスとなるのか?
ほかは矢印のとおり。
ディープクロスのカギとなるタイリーク・ヒルは左の1番内側のレシーバーです。
ディフェンスは3-2-6のダイムパッケージです。
DB(ダイムバック)の選手はDで表しています。
これまたLB2人がクロスでブリッツに入るアグレッシブなアサインメントです。
なので、カバーはFSがフリーでディープを守るカバー1となります。

丸を付けた2人のDBが抜かれています。何しとんねん!
画面には映っていませんが、左の奥にFSが下がっています。
ところが2人も抜かれていてはどちらをヘルプすれば良いのか判断しかねるところです。
画面奥側のWRタイリーク・ヒル(Tyreek Hill)はさらに画面奥側に向かって斜めに突っ走ります。
位置関係的にもFSのヘルプは間に合わないため、ヒルにロングボム。めでたしめでたし。
こちらもディフェンス目線から考えたいと思います。
まずDBは一瞬で抜かれすぎ。
マンカバーはDBが不利といってもここ1番はもうちょっと頑張ってほしい。
そうすればブリッツが届いていたと思います。
NFLにおけるRPOの使用状況
スプレッドオフェンスチームの代表的なプレイがRPOということで、おまけとしてNFL全32チームのRPOの回数を調べました。
PRO FOOTBALL REFERENCEというサイトにパスのプレイタイプごとの試投回数と獲得ヤードがリストとしてまとめられていました。サンキューベリーマッチ。
今回はそのリストを基にRPO全体の回数と獲得ヤード、パス・ラン・RPO全体の1回当たりの獲得ヤードを追記したものを添付します。
| Tm | PassAtt | PassYds | PassYds/Att | RushAtt | RushYds | RushYds/Att | RPOAtt | RPOYds | Yds/Att | 
| 101 | 858 | 8.50 | 191 | 1018 | 5.33 | 292 | 1876 | 6.42 | |
| 105 | 985 | 9.38 | 149 | 633 | 4.25 | 254 | 1618 | 6.37 | |
| 86 | 718 | 8.35 | 128 | 568 | 4.44 | 214 | 1286 | 6.01 | |
| 95 | 763 | 8.03 | 102 | 478 | 4.69 | 197 | 1241 | 6.30 | |
| 90 | 638 | 7.09 | 107 | 471 | 4.40 | 197 | 1109 | 5.63 | |
| 111 | 999 | 9.00 | 85 | 284 | 3.34 | 196 | 1283 | 6.55 | |
| 59 | 537 | 9.10 | 100 | 426 | 4.26 | 159 | 963 | 6.06 | |
| 76 | 553 | 7.28 | 46 | 195 | 4.24 | 122 | 748 | 6.13 | |
| 32 | 200 | 6.25 | 85 | 335 | 3.94 | 117 | 535 | 4.57 | |
| 52 | 450 | 8.65 | 61 | 301 | 4.93 | 113 | 751 | 6.65 | |
| 39 | 141 | 3.62 | 66 | 264 | 4.00 | 105 | 405 | 3.86 | |
| 43 | 190 | 4.42 | 54 | 293 | 5.43 | 97 | 483 | 4.98 | |
| 41 | 240 | 5.85 | 56 | 288 | 5.14 | 97 | 528 | 5.44 | |
| 39 | 229 | 5.87 | 53 | 220 | 4.15 | 92 | 449 | 4.88 | |
| 47 | 479 | 10.19 | 44 | 248 | 5.64 | 91 | 727 | 7.99 | |
| 46 | 484 | 10.52 | 37 | 155 | 4.19 | 83 | 639 | 7.70 | |
| 29 | 228 | 7.86 | 41 | 154 | 3.76 | 70 | 382 | 5.46 | |
| 21 | 51 | 2.43 | 48 | 220 | 4.58 | 69 | 271 | 3.93 | |
| 26 | 200 | 7.69 | 40 | 251 | 6.28 | 66 | 451 | 6.83 | |
| 24 | 256 | 10.67 | 41 | 226 | 5.51 | 65 | 482 | 7.42 | |
| 21 | 90 | 4.29 | 42 | 188 | 4.48 | 63 | 278 | 4.41 | |
| 25 | 233 | 9.32 | 30 | 98 | 3.27 | 55 | 331 | 6.02 | |
| 31 | 205 | 6.61 | 21 | 85 | 4.05 | 52 | 290 | 5.58 | |
| 23 | 229 | 9.96 | 29 | 150 | 5.17 | 52 | 379 | 7.29 | |
| 35 | 398 | 11.37 | 16 | 87 | 5.44 | 51 | 485 | 9.51 | |
| 22 | 214 | 9.73 | 22 | 91 | 4.14 | 44 | 305 | 6.93 | |
| 11 | 88 | 8.00 | 28 | 165 | 5.89 | 39 | 253 | 6.49 | |
| 29 | 219 | 7.55 | 8 | 71 | 8.88 | 37 | 290 | 7.84 | |
| 21 | 173 | 8.24 | 13 | 60 | 4.62 | 34 | 233 | 6.85 | |
| 11 | 78 | 7.09 | 22 | 104 | 4.73 | 33 | 182 | 5.52 | |
| 8 | 28 | 3.50 | 21 | 85 | 4.05 | 29 | 113 | 3.90 | |
| 9 | 86 | 9.56 | 17 | 140 | 8.24 | 26 | 226 | 8.69 | 
こう見るとイーグルスとレイブンズ、ドルフィンズもかなりのRPO好き。
しかもイーグルスとドルフィンズは1回当たりの獲得ヤードも多い!
いかに効率の良いプレイかということが分かります。
ただランやショートパスを展開するよりも確実に1stダウンに近づくことが可能となります。
しかし、RPOを使わないからといって弱いとも限りません。
バッカニアーズやベンガルズなどは別の戦術をメインに据えているので、RPOだけに頼らずとも21年シーズンのプレイオフに進んでいます。
その辺はまた次回以降に。


 
			 
			 
			 
			 
			
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