モダンフットボールにおける3大オフェンス戦術 – スロウバックオフェンス

こんにちは。

「させていただきすぎ問題」について一石を投じたい。
いつごろからか、謙る意図を示すためか「させていただきます」という敬語が増えてきました。
明らかにぼくが子どものころには頻出しなかった言葉です。
ぼくが気づいたのは大学生くらいのころでしょうか。
だから10年くらい前。
動詞に「させていただきます」を付けるだけで丁寧さを表現できる手軽さも相まって爆発的に広まったような気がします。
しかし、その言葉は本当に丁寧ですか?
「させていただきます」ってすべての事柄が誰かに許可を得なければならないことでしょうか?
ぼくがおかしいと思う最たるものがYouTubeなどのコメントで見かける「いつも拝見させていだだいております」。
「拝見する」という言葉がすでに謙譲語ですよ!?
二重敬語的な違和感を覚えずにはいられません。
それと、「させていただきます」は噛みやすい。
「させせいただ…」とかなってしまうくらいなら「いたします」で良いのでは?
丁寧な言葉づかいというのは、相手への敬意も大事ですが、最優先は分かりよく、意図が正しく伝わることではないでしょうか?
このまま行けば、日本の敬語はFM802の深町エリザベスみたいになってしまう。
ぜひ、みなさんも簡潔で丁寧な日本語を身につけていただくようよろしくお願い申し上げ奉り申し上げまする。

何の話や。
さて、前回、前々回と続き現代フットボールのオフェンス戦術は今回でいったん一区切りとなります。
最後はスロウバックオフェンス。
要は昔ながらのNFLのオフェンスというやつです。
それでは早速。

目次

スロウバックオフェンス

定義

フォーメーション:2TEのアンダーセンター
ラン:ダウンヒルのフィジカルゲーム
パス:縦に伸びるプレイアクション、イン・ブレイキングルート

代表的なチーム

テネシー・タイタンズ
ニューイングランド・ペイトリオッツ
タンパベイ・バッカニアーズ

特徴

一般的にNFLのオフェンスってこんな感じだというものです。
お寿司に例えると、このスロウバックオフェンスが鉄火巻きとか光り物の握りで、ワイドゾーンやスプレッドオフェンスがコーンマヨの軍艦とかカリフォルニアロールみたいなもんです。
余計ややこしくなった。
要は昔ながらのムキムキマッチョなフィジカルランニングゲームと大砲パスゲームです。
QBはもちろんアンダーセンターにセットします。
これまでのオフェンスは前進するためにフィールドを広く使ったり、横に使ったりするというのが、海外サイトの説明でしたが、こちらは直接的に陣地争いを繰り広げます。
ど真ん中やオフタックルなどの基本的なランプレイを主軸としてディフェンスを前に寄せた後、LBの裏を狙ったパスというのが基本的な考え方です。

ランはダウンヒル的なプレイが多い。
アイソやパワー、ダイブ、ドローのほか、もちろんゾーンも使用します。
男臭く泥臭い古き良きアメリカ人男性が好みそうなフットボール。
誰でもフットボールを始めたとき、最初に学ぶようなプレイです。

パスはランの裏をつきます。
前々の直球ランをガツガツぶつけることで、LBは自然と前に寄ってきます。
そこでLBが負担するゾーンにレシーバーを送り込む。
インサイドにブレイクするカールや10ヤードインなどは狙い目です。
プレイアクションを混ぜるとさらに効果的なものとなります。
ただし、スプレッド系のオフェンスと比べるとディフェンスは広がらないので、タイトウィンドウへのパスが要求されます。

このオフェンスはシフトが重要だとか。
シフトとモーションの違いはいくつかあります。
複数人を一度に動かせる、スクリメージラインに並んでいる選手を含めて前後に動かせる、その代わりプレイが始まるまでに1秒静止しなければならない。
この特徴を生かすと、モーションより正確に相手のカバレッジを見極めることができます。
静止する必要があるため、QBは最後までディフェンスがどのようにアジャストするかを観察できます。
複数人を動かすと誰が誰にマッチアップしているのかの情報が増えます。
必ずしもオフェンスだけに利点があるわけではありません。
ディフェンスもプレイが始まるまでにオーディブルコールを使いやすくなります。
それと、カバレッジを読み間違えるとえらいこっちゃになるとか。
レシーバーのルートは、カバレッジによって多少変化します。
例えば、ポストの場合、カバー3ならあまり内側に入り込まず、ほとんど縦に走ります。
カバー2なら大きく内側に入り込みます。
これはディープゾーンのシームが変わるからです。
ぼくがやっていたフットボールのレベルではこの程度のアジャストですが、NFLにはカバレッジによってフックしたりそのまま縦に走ったりとアジャストの種類は豊富です。
これがNFLのQBというポジションが難しい理由だとか。

一見すると、それならスプレッド系のオフェンスの方が良いのでは、と思いますが、この奥深さがNFLのディフェンスを攻略するためには必要なことでもあります。
スプレッドやワイドゾーンオフェンスはバリエーションが少ないらしい。
であれば、豊富なバリエーションがあるNFLスタイルのオフェンスの方が、レベルの高いディフェンス相手にも得点を重ねることが可能というわけです。

ぼくがこのオフェンスで最も成功していると思うチームはペイトリオッツです。
ビル・ベリチック(Bill Belichick)HCのプレイブックは難しいそうで、アサインメントを覚えるのも苦労する選手がいるそうな。(NFL Japan.comかどこかで見たと思う)
でも、彼は昔ながらのフットボールを大事にしています。
FBが各チームから消える中、ペイトリオッツはFBを重宝しています。
ひとつひとつのプレイを点で見ると、結構シンプルなプレイもあるし。
その代わり、普通にやってるように見えて試合のストーリーや各シリーズのプレイ選択、パスルートのアジャストなどで相当頭をひねってるんだろうと思います。

プレイ紹介-

Matt St. Jean氏のTwitterから引用

スレッドの下の動画が今回の主題です。
NFLというかフットボールの教科書的なプレイです。

続いてアサインメントを。

こちらが最初のランプレイ。
ブラスト(Blast)というかTBダイブ(TB Dive)というかよく分かりませんが、ど真ん中ブチ抜きマッスルプレイ。

最後のプレイアクション。
シフトしたTEは、ついてきたOLBを一度ブロックしてからルートに出ます。
そのほかのルートは保険です。
まず投げません。

ランプレイは種まきです。
相手ディフェンスのカバーやランへの反応を見極めます。
今回の場合はマンカバーで最後にタッチダウンするTEにはずっとLBがマッチアップしています。
1回だけならたまたまの可能性もあるので、2回以上繰り返して読みを確実なものにします。
それとディフェンスの脳みそにこのランプレイを植え付けておきます。
そして、ゴール前の勝負時にいよいよプレイアクションを仕掛けるわけです。
同じようにシフトとモーションを見せることで、同じランプレイを意識させます。
このくらいでNFLの選手が騙されることはありませんが、意識させることが重要なのです。
ランの場合、LBはRBに外を抜かれてはいけないという心理が働きます。
ただでさえ、TEに対するLBのマンカバーはLBが不利と言われているのに加え、ゴール前のランを意識させることでよりTEに有利な状況をつくりだします。
じっくりお膳立てをしてあげれば、あとは優しくボールを落としてあげるだけ。

ショットガンとアンダーセンターの比率

今回のおまけはショットガンとアンダーセンターの比率です。
Sharp Football Statsという海外サイトに載っていました。
自分でなにか加工したわけではなく、そのままコピペするのもあれなんで、今回はリンクを貼り付けておきます。

https://www.sharpfootballstats.com/snap-rates–shotgun-v-under-center–off-.html

2019年のデータですが、こう見るともはやNFLでもショットガンの方が主流となっています。
レイブンズなんか全スナップに対し、ショットガンが96%!
それと、ペイトリオッツは今回のスロウバックオフェンス、昔ながらのプロスタイルオフェンスですが、全スナップで見るとショットガンとアンダーセンターが半々。
プレイ別に見ると、ランはほとんどアンダーセンターで、パスはほとんどショットガンが優勢です。
ショットガンの魅力は最初からQBが下がっているためにフィールド全体を見渡しやすいことです。
そうなるとパスで生きるのは分かりますが、あまりにも明確に分かれすぎているような気も。
ディフェンスからすればQBの位置でプレイが読みやすすぎる。

NFLのオフェンスについての疑問

ぼくにはひとつ疑問があります。
NFLのディフェンスに対応するために複雑なオフェンスが必要で、スプレッド系のオフェンスはバリエーションが少ないというなら、なぜチーフスやビルズがこんなに強いのか。
ぼくにはその理由が見当たらない。
NFLとカレッジの違いは分厚い選手層とレベルの高いディフェンスだとぼくは思っています。
実際にカレッジほどNFLにおける1試合当たりの得点は多くない。
1試合で40点、50点入る試合はそんなにないでしょ?
ならば、カレッジスタイルのバリエーションが少ないオフェンスなんか通用しないはずです。
でもチーフスやビルズのオフェンスは相当な得点を稼いでいます。
まさにカレッジフットボールのように。

これはあくまで僕の仮説ですが、レベルの高いディフェンスというのはまやかしで、実はオフェンスが勝手に難解な戦術に振り回され、自縄自縛に陥っていただけなのではないか?
先ほど、NFLとカレッジの違いについて、ディフェンスのレベルの高さを挙げました。
でも、カレッジの上澄みを掬った選手で構成されるディフェンスのレベルが上がるなら、同じようにオフェンスのレベルも上がらなければおかしい。
つまり、「NFLはディフェンスのレベルが高いから、より複雑な戦術にしなければオフェンスは勝てない」という固定観念が間違っていて、カレッジスタイルのオフェンスでも能力が高い選手が遂行すれば通用するんじゃなかろうか、ということです。
もちろん、スプレッド系のオフェンスでもカレッジよりは複雑でしょう。
それでも、プロスタイルのオフェンスよりは「QBフレンドリー」だと海外サイトは評しています。
であれば、戦術を複雑にしすぎるくらいなら、マンパワーでシンプルにぶつかる方がまともな試合も増えるのではないでしょうか?

まとめ

フットボール講座はいかがでしたか?
いまのNFLもカレッジ化が進んでいるなぁという印象です。
改めて自分でも調べると勉強になりました。

ほかにもおおざっぱに言うと、ラン&シュートオフェンスやエアレイドオフェンスなどがあるそうです。
そちらもいずれは調べて紹介したいと思いますが、今回は海外サイトの情報を基にぼくが知っている情報をおまけしたものが基本だったのでまたの機会とします。

NFL全チームのオフェンス・ディフェンス戦術の個人的な予想とか要りますか?
カレッジフットボールは、スプリングゲームも終わったのですぐに取り掛かる予定です。
みんな同じようなオフェンスなんで、やる意味は分かりませんが。

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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (3件)

  • どうなんでしょう
    自分もバスケやってたときに無駄に複雑なセットオフェンスよりかピック&ロールのが点とれましたね
    ただ回りが複雑なプレイをするチームが多いので逆に単純なプレイに対応しづらいとかもあるかもなーと
    これでみんなシンプルになったら今度は点とれなくなるかもなあ
    あとは選手の得意プレイや実力もあるんでなんとも

    まあむだnい複雑にしなくてもいいんだいってのは納得ですけどね
    てんとりゃなんでもいい

  • まあ点数とれてるから複雑にしなくてもいいってのもなんとも言えませんが
    考えるべき問題ではありますよね

  • まあ最近始めた素人からするとスプレッドオフェンスでもめちゃくちゃ複雑に見えますけどねw

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