こんにちは。
あまりにも基本の話なのに全然触れてこなかったフォーメーションについて。
このブログをご覧のみなさんなら「オフェンスのフォーメーションくらい知ってるよ」という方も多そうです。まあ、ちょっと待って。フォーメーションの名前や配置は知っててもそのフォーメーションの強みや意味、そしてどのようなプレイが予想されるかご存知ですか?同じフォーメーションでもレシーバーのスプリットによって予想されるプレイは大きく変わります。
今回は大まかなフォーメーションとその役割などについて学びましょう!バックスのフォーメーションやレシーバーのフォーメーションなど色々ありますが、ごった煮でいきます。
バックスのフォーメーション
I – Formation
Pro I
アメフトのフォーメーションと言ったらこれ。渋谷の女子高生でも知ってるフォーメーションです。
この図の場合はPro Iという体型です。一般的に2RB、1TE、2WRの21 Personnelで構成することが多い。FBがいないチームならTEをFBに使ってもヨシ。
NFLではよく見るフォーメーションです。カレッジだとケンタッキー大学とかのプロスタイルオフェンスのチームが使います。
I – Formationのメリットは直線的、いわゆるダウンヒルなランを展開しやすいこと。QBと2人のRBが一直線に並んでいるのでインサイドのランプレイは早いタイミングでLOS(Line of Scrimage)を抜けやすい。代わりにパスオフェンスはスプレッド体型と比べると少なめ。
用法としてはこんな感じです。Derrick Henry(デリック・ヘンリー)を存分に生かしたマッスルプレイ。だいたいPro Iのフォーメーションはマッチョなフットボールを展開すると思ってもらって結構です。
だからといってパスがないわけではない。プレイアクションしやすいのもPro Iの特徴。ランに強い体型だからディフェンスも前のめりになりがち。そこでプレイアクション。結局、人類はプレイアクションに弱い。
Offset I
FBが少し横にズレたフォーメーションをOffrset Iと言います。ストロングサイドにズレていたらStrong I、ウィークサイドならWeak Iと呼ばれます。
FBが横方向にズレたことで横へのプレイ展開もしやすい。こちらもNFLでの使用が多い。
これはふざけたプレイ。Orbit Return Motionはディフェンスをモーションしたレシーバーサイドへ食いつかせるため。実際はFBがハンドオフを受けてそこからTBとオプションランを展開します。実際にはモーションしたレシーバーへのピッチもやった上でこのプレイなのだと思います。
Jumbo
脳筋フォーメーション、それがJumbo。カレッジではあまり見ません。
Pro Iからさらにラン重視の体型です。この体型を使うのは1ヤード未満のショートヤードが欲しい3rd、4thダウンやゴール前くらい。アーリーダウンではまあ見ません。
このとおり、ちょっとだけ稼げます。ディフェンスも当然パーソネルにアジャストするので重量級を揃えます。
普通にやってもダメそうならQBネイキッドでもヨシ。プレイアクションでもヨシ。
Split Back
アンダーセンターよりショットガンの方がよく見るのでこうしました。2 Backですが2人は横並びなのが特徴です。
I – Formationとの違いは何かというとどちらのRBがボールを持つか分かりにくい。I – FormationならだいたいTBが持ちます。Split BackならどっちのRBが持って左右どちらにもプレイしやすい。
普通のSplit Zoneですが、2 Backならディフェンスはどちらが持つのか読みにくい。
こちらはSplit Zone fake Arrow。キックアウトのRBはブロックせずそのままArrowルートへ。
今度はSplit ZoneのTriple Option。手前のEDGEがDiveに食いつかなければそのままハンドオフ。
Shotgun
いまや古今東西ショットガンが当たり前の時代になりました。QBがCから4-5ヤード後ろにセットします。日本のアメフト事情は存じあげませんが、カレッジではほとんどがショットガンをメインとしたオフェンスです。それに比べたらNFLはまだまだアンダーセンターのセットバックが多い。
一般的にドロップバックする必要がなくすぐにパスターゲットを探しやすいというのが、ショットガンのメリットとして挙げられます。位置関係的にHBもパスコースに出やすいしパスプロもしやすい。それは確かにあります。
ただし、ランでもメリットはあります。それは横展開のランに強いこと。特にInside ZoneとかSplit Zone、Zone Readとの親和性は抜群です。QBの横にセットしているHBがボールを受け取ってすぐに目当てのホールに飛び込めます。スプレッドオフェンス最大のランプレイであるInside Zone系のランはBubbleとなっているBギャップを攻めるという話は以前Tite Frontの時に話しました。
4-2-5 Nickelだろうが3-4 Okieだろうが、BギャップはどうしてもDLで埋めることができない穴となるので、弁慶の泣きどころとなります。だからShotgunはInside Zoneをよく使うカレッジで主流となっています。Tite FrontやMint FrontなどによってOpen Bギャップが塞がれるようになったいまは、GT CounterやQB Split Zoneなどエクストラギャップをつくりだすランが流行りだしています。それにRPOとの相性もすこぶる良い。
パスは死ぬほどあります。お好きなコンセプトをどうぞ。
Inside Zone – Glance RPOです。BSがReadの対象となります。2 Highだと最近はSAFもランフィットの責任を持つことが増えています。そしたらそいつを狙ってやれば良い。ランに上がってくればパス、後ろにいるならGiveという具合です。
Pistol
なんでPistolなんかは知りません。ShotgunだけどQBのさらに後ろにTBがセットします。どこのチームもよく使います。
I-FormationとShotgunのいいとこ取りをしようとした体型です。ドロップバックする必要ないし、ダウンヒルなランも展開しやすい。別にZoneランもできる。欠点はTBがパスプロしにくい位置にいること。別に上の図で考えずSingle Backでも同じことです。TBからしたらQBがちょっと邪魔ね。
Quads UnbalancedからのGH Counter。オープン(ウィーク)サイドへのランが予想される体型からのクローズド(ストロング)サイドへのラン。とにかくクローズドサイドへエクストラギャップをつくりまくって重量級のブロッカーをけしかける。性格ワルワルなプレイ。
テキサス大学のSteve Sarkisian(スティーブ・サーキジアン)はこれ大好き!頻出も頻出のプレイ。Split Zone fake Post-Wheel-Arrow。今シーズンこれ何回見た?ってくらい。ようはNo.1-3までのカバレッジミスを誘うプレイです。Man-MatchだろうがZone-Matchだろうがだいたいレシーバーに対してマッチするディフェンダーが決まっています。それをプレイアクションで潰してやろうという魂胆。CBはNo.1レシーバーが縦に押してきたのでそのままM/M、FBのWheelは通常OLBがマッチするはずです。ただプレイアクションに引っかかった後ついていけていません。このプレイを今シーズンまともに守れた相手はいるのか?
レシーバーのフォーメーション
2 by 2
Ace
多くの人はAceと呼ぶかと思います。ほかはあまり知りません。TEがOLにくっついていたらSpreadと呼ぶ人もいたような。
今となってはかなり高頻度で見る体型です。NFLだろうがカレッジだろうが見ない日はない。パスとランのバランスが非常に良い体型です。特にTEがOLにくっついていたらInside ZoneとかSplit Zoneをやりやすい。それにプレイアクションもスクリーンもドロップバックのパスもなんでもござれ。
代表的なパスコンセプトとしてSmash-7やSlant-Flatなどがあります。
このようにTEとWingをくっつければランが予想される体型に早変わり。実際はプレイアクションというアジなプレイ。
最近のNFLの若手HCが大好きなプレイはFour Vertical。2 Highならシームを狙えばヨシ。マンカバーならミスマッチを狙えばヨシというお手軽ながらめんどくさいプレイです。
体型のバリエーションも紹介します。
2 by 2 Stack
これはテネシー大学をはじめ、カレッジで見かけるタイプのAce。2 by 2 Stackとかいう人もいます。
ここからSwitch Verticalとかを見かけることが多い。
LOSにセットしたレシーバーがDigルートを走るその裏からFadeに抜けるプレイ。スイッチすることでピックなりカバレッジミスを誘うことができます。
2 by 2 Stackを使うとディフェンスがボックスとレシーバーのどちらを警戒しているかが分かります。K-Stateの2 by 2 Stackに対しS. Illinoisのディフェンスはボックスに6人を配置しています。狭い方のバウンダリーサイドとフィールドサイドのレシーバーにはそれぞれ2人ずつ配置しています。画面には映っていませんが、FSがトップにいるはずです。バウンダリーサイドとフィールドサイドの広さを考慮したバランスの取れた配置となっています。ボックスに6人いるということは、すべてのギャップを埋められることになり、オフェンスにとってランをするメリットは皆無です。プレイが始まるとバウンダリーサイドのILBはランに反応、だからNow Screenを選択しました。こうやってランとパスどちらにも責任を負っている選手を責めてやることが大事。
2 by 2 condensed
NFLでよく見かける2 by 2の体型。2 by 2 condensedとか2 by 2 squeezeとか呼ぶ人もいます。
Zone Blockingのランなんかやりやすい体型です。最近は使い古されているので裏をかくようなプレイが多い。
Sweep fake Arrow Screenです。そういう名前なのかは分かりませんが、Arrowルートのスクリーンパスです。最近のフットボールではディフェンスを左右に分断するプレイが多い。
2 by 2 condensedからよくあるパターンはMesh。これはテッパンのプレイです。カレッジだろうがNFLだろうがショートヤードが欲しい場面ではかなり有効なパスパターン。最近はRBとLBのミスマッチを狙ってRailに投げることも多い。
3 by 1
Trips
3 by 1はだいたいTripsって言っとけば間違いない。UのTEがくっついたらSuperとか呼ぶ人もいますが、とにかくTripsで「あー3 by 1のことだな」と通じるはずです。
ご覧のとおり、2 by 2の体型と違って片側に人数を寄せているのが特徴です。このフォーメーションのメリットはディフェンスに選択を強いることができます。Tripsサイドを重点的に守るのか、Singleサイドを守るのかといった具合に。エースレシーバーをどこに配置するかで遊ぶこともできます。Singleサイドのフォーメーションから離れたPlus SplitにセットさせればSlantでCBと勝負させることもできるし、普通のSplitにセットさせればFadeで勝負できます。逆にOLに近いNasty SplitにセットさせればPA Bootなんかのターゲットにもできます。
逆にTripsサイドのNo.3レシーバーにセットさせればLBとのマッチアップをつくれます。
Tripsの攻め方として、No.3レシーバーとマッチするディフェンダーを攻める方法があります。そのディフェンダーはだいたいランフィットの責任も負っています。そうなればプレイアクションでイジメちゃえ!というのが最近の流行り。
カレッジならPost-Wheelがテッパン。
Bunch
みんな大好きBunch。どのレベルのフットボールでも使うフォーメーションです。その心はピックルートをつくりやすいこと。こんだけギュウギュウに詰まった体型から3人のレシーバーが交錯しながらパスコースに出ればディフェンダーは嫌でもゴッツンコします。
ディフェンスはディープのアウトサイドとインサイド、アンダーニースのアウトサイドとインサイドを4分割するBoxカバーしてやれば比較的簡単に守れます。
代表的なパスコンセプトにSpacingとSpotなどがあります。
SnagはSpotの進化系みたいなコンセプトです。
Bunchはなにもパスだけのフォーメーションじゃない。OLに3人くっつけることで、エクストラギャップをつくりだせます。
メインのターゲットであるNo.3レシーバーはオプションルートとなります。先にパスコースへ出たレシーバーがそれぞれにマッチするディフェンダーを連れて行きます。残ったNo.3レシーバーはマッチするディフェンダーとの位置関係を見て内に入るか外に流れるか決めます。動画の場合は自分より外側をキープしていたから内側へ抜けました。
Nub Trips
Tripsの中でも最近はNub Tripsというのが流行っています。ぼくの理解ではSingleサイドがOLにくっついている体型というものです。改めて調べて単体のブログにでもしようと思います。
軽く説明すると、Nub Tripsはシングルサイドへのランも狙っているということです。Xの代わりのUのTEにマッチするのはCBが多いのです。こいつをイジメるのがこの体型の狙いだとか。余ってるフィールドも広くタックルが上手くないCBにRBをあてがうことでいい感じにゲインしてやろうという魂胆です。
Pin&Pullみたいなプレイですが、WingのTEがCBをブロックしています。これであとはSAFと1 on 1となります。これの後にNo.3へのSwing Screen RPOカマせばディフェンスは振り回されるというカラクリです。
こういうのも面白いね。QB Belly fake Y Pop RPO。QBランとなるとSAFも含めて止めに行かなければなりませんが、その裏をつくパス。SAFがパスカバーするなら走ればいいし、ランに上がってくるならパスを投げればいいという凶悪なプレイ。だからってボックスに人数寄せすぎるとTripsサイドへのパスを通されます。ディフェンスは全員が1 on 1に勝たないといけない。
Empty
パスオフェンスの隆盛とともによく見るようになったEmpty。バックフィールドにQB以外いないからEmptyね。基本はショットガンから使います。わざわざドロップバックする意味もないので。
最大の目的はディフェンスを強制的に最大限広げることにあります。別に3 by 1だろうが2 by 2だろうがRBをパスコースに出せば5人をパスターゲットにすることができます。5人をLOSかLOSから一段下がった位置にセットさせることで全員がWRまたはスロットレシーバー、TEのルートを走ることができます。それにミスマッチをつくりやすいし、カバーしきれないレシーバーを生み出しやすい。
以前はパスプロが少なくなるため、いまほど多くは見られませんでしたが、DPI(Defensive Pass Interference)やRoughing the Passer、Illegal Contact、Defensive Holdingなどの反則が有利に働くため、よく見られるようになりました。
ショートヤードが欲しいホットルートや長いパスも使えます。そこはOCの腕の見せどころです。
こういうのがEmptyではつくりやすい。短いゲインですが、確実に取れる。No.2レシーバーがSpotに入ってくる裏からFlatへ出るNo.3レシーバー。ショートヤードでありがちなマンカバーをぶち壊すピックルート。
こちらも面白い。画面手前のNo.2にモーションしてきたレシーバーにはLBがマッチアップすることに。WRとLBではミスマッチとなります。そしてほかのレシーバーは縦に引っ張ってアンダーニースのディフェンダーはいません。そしたら田舎のサービスエリアのドッグランより広いスペースが生まれます。あとは元気に走り回るだけ。
EmptyなのにQBがアンダーセンターにセットしたら要注意!実際のプレイはOrbit MotionからのSweepです。普通はパスが予想されるEmptyでアンダーセンターなんて何かあります。
Quads Unbalanced
片側にレシーバーを4人セットさせるからQuads、ついでにUnbalanceの体型にしています。最近のカレッジでは特によく見る体型です。
Unbalanceになると、LOSに並んでいる外から2番目のレシーバー、上の図の場合は右のTEが無資格レシーバーとなります。それでもよく使うのはNub Tripsで説明したのと同じような理由があります。オープン(ウィーク)サイドのディフェンダーを揺さぶる目的があります。
ディフェンスがゾーンカバーならCBが左のオープンコンテインを担う場合が多い。そうなればそこを攻めてランを仕掛けるもヨシ、プレイアクションやRPOで攻めるもヨシというわけです。と見せかけてQuadsサイドへのスクリーンもあり。
ことしのベイラーがTCU相手に使った面白いプレイ。GG Counterですが、Pull Outする両Gは一度Zone Stepを踏みます。これでLBは騙される。そしてクルリと回ってPullします。オープンコンテインのCBをキックアウトしてしまえばハイラックスが走れるくらいのホールが完成します。あとは爆走兄弟レッツ&ゴー。
こちらはQB Split Zone – Swing Screen RPOです。モーションするRBに誰もマトモにアジャストしていないからスクリーンをチョイスしました。逆にちゃんとアジャストするならQBが走ります。
ぼくが応援するOle MissのLane Kiffinはホントに性格悪いプレイをよく思いつきます。これはGH QB Counter – Wheel RPOです。手前のCBがQBランに上がってくるならRBへパス、逆ならQBランという具合です。この手のQBランを含めたRPOはNub Tripsの時にも言ったように全員がしっかりマッチアップする相手に勝つ必要があります。
コメント
コメント一覧 (2件)
いつもありがとうございます。
ワイドサイドオフェンスの記事がもう一度読みたいです!
コメントありがとうございます。
ワイドサイドというのはワイドゾーンのことでしょうか?それなら記事は残っていますよ。
もしスプレッドオフェンスの話なら、先ほど確認した結果、誤って削除していたようなので、再投稿しました。