こんにちは。
ランプレイには大まかに区切って3種類あると説明し、前回はZone Runについて学びました。
今回はその続き、Gap Runを勉強しましょう。Gap RunもZone Runと同じくよく使われるタイプのプレイです。何かの記事で読んだのは、特定のGapに狙いを絞ったランプレイが最も効率よくゲインできるとかなんとか。そういった意味でGap Runは最高のプレイと言えるかもしれません。
Gap Schemeとはなんぞやからどんなプレイがあるのかまで今回も学びましょう。
Gap Schemeとは
Gap Schemeとは、簡単に言うと位置関係 (Leverage) を生かして空けたいホールを空けるランプレイです。ではLeverageとはなんでしょう?ボールキャリアーが進む方向と反対にブロックすることで、OLたちは真っ正面からブロックするより簡単にDLを抑え込むことが可能です。このLeverageを生かしたブロックをDown Blockと言います。Gap Schemeでは、このDown BlockとPullによるKick OutやPullからのWrap Upのブロックを組み合わせたプレイが一般的です。
Down Block
ではDown Blockとはどんなものでしょうか?言葉だけではイマイチ伝わらないので画像を交えて説明しましょう。
線を引っ張ってるのがDown Blockです。ボールキャリアーが進む方向はHBから伸びている矢印で示しており、この場合は左に進むことになります。OLたちはみんな右側にブロックに向かっています。プレイが左に進むのにブロックは右に向かうと言うことは、DLたちをプレイの進行方向側から頭を抑えてしまうことができます。これがDown Blockです。DLたちが進みたい方向をあらかじめ塞ぐことで空けたいホールを簡単に空けることができます。そしてこの有利な位置関係が「Leverageを生かす」ということです。
Gap-Down-BackerとGap-On-Down
Down Blockが分かったところで、いかにDown Blockの対象を決めるのでしょうか?ルールとしては主に2つあります。
Gap-Down-Backer (GDB)
おそらくこれがスタンダードなんだと思います。検索に最も引っかかるルールです。
※ルールの説明のために多少いびつなDLのアラインメントはお許しください。
GDBルールはこのように徹底して内側に壁をつくるようなブロッキングルールです。単純化するとZone Schemeの反対と覚えてもらって構いませんが、細かく言うと上記のようなルールがあることを覚えてください。
Gap-On-Down (GOD)
こちらはこちらでメジャーな考え方です。
GODルールの場合、Downの前段階で自分に被っているDLをチェックする必要があります。GDBルールとは違いLBは後から考えることになります。GDBが壁をつくるのに対し、若干前方向に押す要素もあります。
実際の運用では、全員にどちらかのルールを適用するのではなく、Gap-On-Down-Backerの中から優先順位をつけてルールを与えられるのだと思います。そのような解説を見たことがあります。
Kick OutとWrap Up
先ほどのGDBとGODルールの図ではBSG (Back Side Guard) の役割に触れないままでいました。別にDown BlockだけでもGap Runにはなるのですが、一般的なGap Runにはもうひとつよく使われるブロックがあります。それがKick OutとWrap-Upです。
まず、FBが直線的にDEをブロックしている線、これがKick Outです。ディフェンダーを外へ弾き出す際に重宝されるブロックです。先ほどのDown Blockと合わせるとこれでC Gapにホールができることになります。
そして、BSGの役割ですが、まず、本来の位置から大きくプレイサイドへ飛ぶことになります。この動きをPullと言います。Pullから余ったPSLB (Play Side LineBacker) をまくるようなブロックをWrap Upと言います。
Gap Scheme
二つのブロックについて説明した後はそれぞれを組み合わせてみましょう。
こうすればなんとなく見覚えのあるプレイになりませんか?そうPowerです。実際にはプレイサイドのDTを1 vs 1でブロックさせるのか?といった問題はあれどこれでGap Runの完成です。
Gap Schemeは一般的にどんなOLにも向いているプレイと言われています。サイズが小さい/大きい、速い/遅いなどの特性は関係なくLeverageを生かせばどんなOLでもブロックしやすいのが特徴です。
また、Gap RunがZone RunやMan Runと違うのはZone RunとMan Runがボールキャリアーとディフェンダーの間に壁をつくるようにブロックするのに対し、Gap Runは空けたいホールとディフェンダーの間に壁をつくります。空けたいホールがそれだけ明確なのがGap Run。ちなみにこのような Pullを組み合わせたGap Schemeを1/2 Line Gap Schemeと言うのだとか。
最近のアナリティクスによると、最も効率よくゲインできるのがGap Runだそうな。特にNFLだとKyle Shanahan (カイル・シャナハン、49ers HC) 、カレッジだとLincoln Riley (リンカーン・ライリー、USC HC) らがGap Runを巧みに使ってランゲームを進めています。
Gap Runの種類
ようやくGap Schemeの説明も終わりました。それではGap Runにどのようなバリエーションがあるか見てみましょう。
Power
Powerは最も有名なGap Runと言っても過言ではないプレイです。なにせアメリカのOLコーチが最も信頼を置くランプレイだそうな。とにかくフットボールでは最もポピュラーなプレイのひとつであり、最もゲインしやすいプレイのひとつでもあります。とにかく最もなプレイ。
POA (Point Of Attack) にとにかくブロッカーを集中させてディフェンスに対し人数勝ちを狙うプレイです。
よくあるパターンとしてはFBなりTEがEMLOS (End Man Line Of Scrimmage) をKick Out、BSGがPullからのWrap Upという具合です。後は基本Down Blockです。
DEUCEと書いてあるのはコンボブロックの呼び方です。Zone Blockingと同じように考えてください。序数とかアルファベットの方式で名前が付けられています。
Powerの優れている点は、front sideのコンボブロックとFB、BSGによるこじ開けるようなブロックです。コンボはパワフルなOLの場合、前々に押せばいいし、力に自信がないOLは横方向にDLを流してしまえばPOAを空けることができます。また、Powerのバリエーションの多さも長所です。どのフォーメーションからでもブロックすることができます。それだけ多くのコーチがさまざまなブロッキングスキームをつくりだしたということでしょう。
その代わりディフェンスのペネトレーションには弱い。BSGがPullした穴から猛烈に抜けてくるディフェンダーがいればなかなか対策しにくい。そのため、Hingeと言ってBST (Back Side Tackle) が一度back side B gapにフタをするブロックをする場合があります。
Counter
Counterは最近かなりホットなプレイです。Powerより多く使うチームもあります。
簡単に言うとFBとBSGの役割を交換したものがCounterです。ほかのOLは基本同じ。RBはCounter Stepと言って一度逆方向に踏み出すことでディフェンスのミスを誘います。(そんなステップに騙されるLBはいませんが)
このCounter Stepがプレイ名の由来となっているわけですが、最近はCounter StepのないCounterもあったりします。では何がCounterなんだと言われても知りません。今ではCounterというプレイは1st PullerのKick Out、2nd PullerのWrap Upというブロッキングルールで決められているのが一般的。
Powerよりオーバーリアクションさせやすいのだとか。BSGとFBが一気に横方向へブロックにスタートするため、LBも大きく横に動きがち。そこをいいアングルで押し出すことができればPOAがガッポリ空きやすいらしいです。
反対に弱点は少しプレイが完成するまでに時間がかかること。Powerより時間がかかることはCounter Stepなどを見ても分かると思います。プレイの完成までブロックを持ちこたえる必要があります。
Duo
Duoはその名のとおり、コンボブロックが鍵となります。プレイの考え方としてはPullなしのPowerと捉えることができます。
基本的にはDown BlockとKick Outだけで構成されます。Gap Schemeの原始的な形と言えばいいのか?全員Down Blockの方向へブロックしながら内側のDLはコンボでブロックしてしまいます。RBはハンドオフを受け取った後、Mikeのリアクションを見て走るホールを選択します。MikeがA Gapを詰めるならC Gapへ、逆ならA Gapへという具合です。このため、コンボブロックはMikeをどちらのOLでもブロックできるようにしておく必要があります。
Pullがないということで、鈍重なOLしかいないチームでも成立するプレイです。有利な位置関係から押し込むだけ。後はRBが上手いことやってくれます。またBunchサイドへ展開するのも強いプレイです。弱いDBを狙いやすくなります。
PowerやCounterほどPOAをこじ開けるプレイではありませんが。
それと、Duoの難点は見ている側からすればInside Zoneと分かりにくいこと。Iフォーメーションなら間違うこともありませんが、Shotgunの時は間違うこともあります。
Dart
Dartは、Powerとよく似たプレイですが、PullするのがBSGではなくBST (Back Side Tackle) です。Tackle Dartとか呼ばれたりもします。
基本的にはPowerと同じ考えで結構です。BSTがPullするためほんの少しタイミングは遅くなります。front sideのEMLOSをどうするかはチームによりけりですが、PSTE (Play Side Tight End) なりPST (Play Side Tackle) がパスプロしてしまえばDEは簡単に外へ開いてくれます。
Powerのチェンジオブペース的に使うことができますし、Powerほどペネトレーションの心配もありません。
BSTが良いPullerでなければいけませんが、カレッジやNFLレベルならそのような心配は無用です。チームにPullが苦手なOTがいるなら無理に導入する必要はないプレイです。
まとめ
Gap RunはどんなOLでも導入しやすくヤードも稼ぎやすい非常に優秀なスキームです。このため、どんなレベルのどんなチームでもいくつかはバリエーションを持っています。Zone Run中心だろうがMan Run中心だろうがGap Runを使わないチームはありません。特にPower、Counter、Duoは非常に万能なプレイです。さらにオプションやRPOとも組み合わせやすいとあってカレッジでは猛威をふるっています。
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