フットボール教室 – パスプロテクション

こんにちは。

アメフトを観る上で忘れられがちなポジション。それはOL。ランでもパスでもプレイを成立させるキモはOLにあります。千里の道もOLから。以前ランプレイについては紹介しています。ランプレイを知ればZone BlockingとMan Blockingについてはある程度理解できたかと思います。

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その上で今回はパスプロテクションについて学びましょう。

目次

Pass Protectionのバリエーション

Man

その名のとおり、OLは人に対してプロテクションするルールです。一般的にBOB (Big On Big/Back On Backer)と呼ばれるプロテクションです。OLはDLと、RBはLBとマッチアップします。大体自分の前にいるDLをプロテクションしますが、CはMikeがブリッツに入ってくるならMikeをブロックします。RBはWillの担当となります。

5-7歩のパスで使われることが多いとか。一般的にパスプロと言ったらこれっていうくらいベーシックなルールです。

体格的に合理的なマッチアップとなっています。この役割を超える人数がラッシュに来たらQBは早くHOTルートに投げてね。

Dane Brugler氏のTwitterから引用

Slide

“Zone”とか”Area”とも呼ばれます。名前のとおり、OLは左か右の一方のエリアに来たラッシャーを受け持ちます。自分のゾーンを持っているわけです。ランプレイのZoneと同じ考え方です。

使われるシチュエーションとしては、プレイアクションパスが考えられます。Inside ZoneとかSplit Zoneと組み合わせたら同じブロックからパスもできるのでディフェンスはリアクションしにくい。あとはクイックヒットのパスでも使います。

役割分担が非常に明快ですが、このFull-SlideはバックサイドのEDGEからのラッシュには弱い。そのためにランプレイと組み合わせる必要があります。

Mark Tyler氏のTwitterから引用

モーションしてきたTEが手前のEDGEをブロックして後のOLは全て画面奥側へスライド。

Coach Dan Casey氏のTwitterから引用

これは多分RBをあえてパスコースに出したプレイ。こんだけブリッツ入るとアンダーニースはガラ空きになります。だからRBをピュッと出してしまえば一撃。

Combo

Full Slideはさすがにリスクデカいので片っぽだけスライドしよう。というわけでSlideとMan Protectionの組み合わせがComboです。現状最も普及しているパスプロテクションだそうです。人によってはこれをSlide Protectionと認識する人もいるはず。なので、便宜上先ほどのSlideはFull Slideと呼ぶことにしています。

Comboのなにが良いかというと、スライドサイドからのラッシュに強いこと。カレッジフットボールでは、NFLより随分ハッシュが広い。このため、広い方のフィールドサイドと狭い方のバウンダリーサイドを生かしたプレイが多くあります。フィールドサイドにプレイを展開されるとディフェンスとしては広い範囲を守らなければならないためしんどいわけです。じゃあ展開される前に潰してしまえということで、フィールドサイドからのブリッツを入れる不届き者がいます。Comboプロテクションでフィールドサイドへスライドすればブリッツは簡単にピックアップできます。

また、大外からのラッシュ、Slant FireなどTEやOTのさらに外からラッシュが来ると普通のプロテクションでは間に合わずにまくられてしまいますよね。だからそういった脅威がありそうだという場合にもスラントします。

カレッジだけでなくNFLでもSlideはよく使われます。最近はZoneランが増えたから割とSlideも使いやすい。昔からあるけど。

Mike氏のTwitterから引用

向かって左のOLがSlide、右のOLがManとなっています。このくらいのTEX StuntsじゃあNFLのOLは騙せません。

Jet Pass Protection

2 Jet Protection

Half Slideの6人プロテクションです。ウエストコーストオフェンスで有名なプロテクションのルールだとか。

何人スライドするかはDLのアラインメントによりけり。

スライドする方向は、ラッシュの脅威がある方。一般的に2 Widestの方向です。4 Down Lineなら3-TechとDEがいるサイドが1番外側に位置していますね。これを多分2 Widestと呼びます。図の場合は左のDEとWillが2 Widest扱いです。

スライドサイドのOLは、例えば図の場合は左側のゾーンを受け持ちます。スライドする側にいてラッシュする可能性のあるディフェンダーをこの3人で守ります。StuntsやTwistの場合は受け渡します。スライドしないバックサイドのOLは自分の相対するDLとBOBのブロックです。このBOBのサイドをSolid Sideとも言うとか。

RBは点線で結んだLBのブリッツをケアします。2人を内から外へ、つまりInside-Outの順番でDual Readします。上の図の場合、両方のLBがブリッツしてきたら内側のLBをブロックします。Aギャップに突っ込んでくる方がQBへの距離が近いから。残りのブリッツはどうしようもないので、QBにはHotルートへ投げてもらいます。ただし、スライドサイドに4人以上のラッシュが来る場合スライドサイドのAギャップを担当します。この役割をAlert Wrapと呼びます。そしてブリッツが入ってこない場合はパスコースに出ます。残ってても意味ないからCheck Wideルートにでも出てセーフティバルブとなってもらいます。

スライドする方向は数字で表します。2 Jetなら左、3 Jetなら右です。200/300は3歩のドロップバックだとか。一般的に2と3は左右を表す数字として有名です。上の図は2 Jetです。3 Jetなら左右を反転してもらえれば結構です。ちなみにJon Gruden(ジョン・グルーデン)用語ではSpider 2で左のスライドを意味します。

Alex Rollins氏のTwitterより引用

これは上手くいった例。

Alex Rollins氏のTwitterより引用

これはRBが大失敗した例。

“Sink”

これは49ersのコールだそう。CにNTが被っている時(だいたいそうじゃない?)Sinkコールが出されます。こうなるとスライドするOLは2人だけです。

スライドサイドのOLはほとんどマンブロックとなります。右のDEとWの2 Widestをそれぞれ受け持ちます。スライドしないサイドはBOB。RBはDual-ReadとAlert Wrapです。

“Fan-Sink”

3 Down Linemen対策のJet Protectionです。C以外はスライドしていますが、左はSink、右はFanコールです。

Sinkは先ほども述べたとおり。CはNTと1 on 1。FanはSinkと同じですが、より外へ広がるイメージだそう。スライドプロテクションながらほとんどマンブロックの考え方となります。RBは点線のLBをReadとAlert Wrapです。全員がブリッツに入るならQBは早よ投げてね。こんだけブリッツ入ったらレシーバーは誰か空いてる。

“Base”

スライドサイドのOGにDLが被っていないBubbleのときにコールされます。

スライドサイドの3人は大きめの破線で囲った3 on 3のマッチアップとなります。基本的にCとGはNTのコンボブロックです。Mikeがブリッツに入る場合はGが処理します。この役割のためにMikeを宣言する必要があります。よく試合中にQBが「52 Mike!」とか叫んでいるのを聞くことがあります。あれはパスプロ上のMikeを決めるためです。

RBとソリッドサイドはBOBでプロテクションします。

ちなみにスロットの位置が左右逆、そしてFSがボックスに上がっており、MikeとWillの位置が逆となっている場合、WillがMike扱いとなります。これをRe-Mikeと言うそうです。別にOLからしたら誰が本来のMikeかなんてどうでも良いのです。スライドプロテクションをするにあたり、必要となるOLにとってのMikeを明確にするためにWillをMike扱いとしています。

“5-0”

5-0(ファイブ・ゼロ)じゃなくて5-0(ファイブ・オー)と読みます。5 Down LineのBear Front対策のプロテクションです。

ご覧のとおり、どこがスライドプロテクションなのか、もはやマンブロックとなっています。一応2 Widestの考え方では右側がスライドサイドとなるはずですが、もうスライドサイドとかは気にしなくて結構です。5人のOLは5人のDLをブロックします。

RBはDual Readとなっていますが、2人以上のラッシュには対応できません。一応QBに近い方から守るのがセオリーですが、QBはホットに投げなければなりません。

“Gap”

LBのAギャップへのブリッツが予想されるときのアジャストです。QBがアンダーセンターのときだけ使います。

図の場合、3 Jetとなっています。このとき、Mikeがスナップ前にLOSまで上がってきたとします。ブリッツが警戒される状況です。この場合CはNTのプロテクションです。通常、LBのピックアップはRBの仕事ですが、TBの位置からではQBがサックされる前にプロテクションすることは不可能な距離です。ということでGがブリッツをピックアップします。かわりにRBはDTを受け持ちます。

明らかにRBとDTでは不釣り合いなマッチアップですが、Mikeに即サックされるよりはマシ。

ショットガンならQBがCから離れた位置にいるので使う必要はなし。

“Snap”

Fire Zone Blitz対策です。

こちらも3 Jetとなっています。Slide SideからのFireが来ます。そして後からMikeがBに突っ込んできます。RBはSolid Sideのブリッツをケアしています。こうなるとプロテクション要員が足りません。そこで、Gは一度DEをチェックしてからMikeをブロックします。このテクニックをDbl Bumpと言いますが、これはScat Protectionの別のアジャストで説明します。とにかく1人で2人を見てRBが間に合うまで時間稼ぎします。これでなんとかしてくれ!という感じ。

それでもRBがDEとマッチアップする不利な状況は解消されません。限界状態のプロテクションです。

Scat Pass Protection

3 Scat Protection

こちらもウエストコーストオフェンスのプロテクションです。

Jetと違う部分は、RBがパスコースへ出ること、つまりScat ReleaseするのでScat Protectionです。DL4人をOL5人でプロテクションするためほとんどマンブロックと同じプロテクションです。

スライドする方向は先ほどと同じように最も脅威となるサイドです。2 Widestが一つの基準になるかと思います。スライドする方向を表す数字も同じく2(左)と3(右)です。

RBがパスコースへ出ることから、パスプロはEmptyとほぼ同じ状態になります。ただ、RBのリリースによってFireブリッツに入ってきたOLBなんかはPeelでついていくことが多いと思うので、リリースによってパスプロしているとも言える。

Bret Rumbeck氏のTwitterより引用

負けてるやつくらいしか見つからなかった。

“Dual”

ソリッドサイドが明らかに人数負けしている場合のコールです。

スライドサイドは2人がスライドします。おそらくFireなんかのブリッツが入っても先ほど述べたとおり、Peelするはずなのでスライドサイドにさほど脅威はない状態です。

ソリッドサイドはOL2人に対し考えられる最大のラッシャーは3人です。これでは足りません。そこでDualコールを出します。Slow To Goというルールに従って内から順番にプロテクションしていきます。DEが大外に飛んだからといって左のOTはついていかずにLBのブリッツをケアしたりします。とにかくQBから近いラッシュから順番に消していきましょうという考え方です。

“Dbl Dual”

左右平等な体型の3-4 Okie対策のDbl (ダブル) Dualです。

まあ普通に考えてこの人数すべてをラッシュに送り込むようなことはあまり考えられませんが、一応対策しておく必要はあります。というわけで両方Dualの考え方でプロテクションしましょうということです。

QBはRBに投げれば一発でしょう。

“Dbl Bump”

Scat Protectionでプロテクションを上回るラッシュが予想されるときの対策です。

2 ScatでSolid SideからSamがブリッツに入ってくるとします。この場合、RBもいないのでどうしようもありません。だから「ガード、お前2人ブロックしろ!」というアジャストです。とりあえずDTの初速を殺してからSamをピックアップします。どうあがいても人数が足りないので、QBはSamの裏に投げるのが吉です。

Pull

たまに見ませんか?パスなのにPullしてること。Pullという名前がついているわけではありませんが、便宜上Pullとしました。

パスプロで検索してもPullするタイプはなかなか見つからない。

まあ、意味は単純です。プレイアクションでよく使われます。ディフェンスがディスガイズするようにオフェンスもディフェンスを騙します。Pullにはそういう役割があります。よく調教されたLBほどPullには反応しますから。

これでパスを通せばディフェンスの足は少し止まります。バチバチに仕上がったディフェンスの勢いを少し殺してやろうというために使ったりします。

Coach Dub氏のTwitterから引用

Play Action挟んでPump fake挟んで実はSluggoという二重のフェイクがあるプレイ。Lane Kiffinっぽい極悪パス。

Coach Dan Casey氏のTwitterから引用

Counter fakeのSlip Screen。Pullを使うことでOLBはそちらに引っ張られます。その逆にTEへスクリーンパスです。タックルしたLBは相当頑張った!彼がいなければかなりのゲインになっていたはず。

ちなみにUrban MeyerがHCだったころのオハイオ州立大学はこれが得意だったとか。通称Gun Pap Play Actionでブイブイいわせていました。ただしPullの向きが逆です。

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