フットボール教室 – カバー7ってなんだろう?

こんにちは。

前回はカバー4のバリエーションについて学びました。

ついに今回は現代のカレッジフットボールやNFLで主流となりつつあるカバー7を学びたいと思います。
カバー7とは何か、実際はどういうカバレッジなのかを見ていきましょう。

その前に前提となる情報を盛り込んでおきます。

目次

Nick Saban(ニック・セイバン)のCover 7(カバー 7)

近年、NFLの戦術はオフェンス・ディフェンスともにカレッジフットボールから大きく影響を受けています。
RPOやスプレッドオフェンスはその最たるもの。
それに対応するようにディフェンスの戦術もカレッジから輸入されています。

今回のカバー7も元々はアラバマ大学のニック・セイバンHCが広めたもの。
セイバンはニューイングランド・ペイトリオッツのBill Belichick(ビル・ベリチック)HCと非常に仲が良いほか、Dan Quinn(ダン・クイン)やJason Garrett(ジェイソン・ギャレット)、Pat Shurmur(パット・シャーマー)など、NFL界にも弟子が多くいます。
こうしたことからカレッジの戦術がNFLにも広がっているというわけです。

今回はセイバンのカバー7をベースに学びましょう。
セイバンのディフェンスを学ぶことはNFLとカレッジフットボール両方のディフェンスを学ぶことにつながります。

Man Cover、Zone Cover、Man-Match、Zone-Matchの違い

さて、最近のカバレッジの種類は大きく分けて4つあります。

まずはマンカバー。
これはすぐに分かると思います。
ディフェンダーはそれぞれ受け持つレシーバーをカバーします。

次にゾーンカバー。
これもそこまで難しくありません。
ディフェンダーはレシーバーではなく、受け持つゾーンを守ります。

続いてゾーンマッチ。
ディフェンダーはまず自分のゾーンにドロップします。
その自分のゾーンに来たレシーバーをマンカバーします。
これがゾーンマッチ。
つまり、自分のゾーンから出ていけば別のディフェンダーに受け渡すわけです。
カバー6をゾーンマッチとする考え方もあります。
ほかにはカバー8なるものもあるそうですが、調べても謎のサイトしか見つからなかったので、置いておきます。

最後にマンマッチ。
今回の主題となるカバー7はマンマッチの一種です。
マンマッチでは、ディフェンダーは自分の受け持つレシーバーがいますが、条件付きでマンカバーするというもの。

用語集

セイバンのディフェンスを学ぶ上で特徴的な用語があるので紹介します。

ポジション

セイバンのカバー7を学ぶ上でポジションも整理しておきます。
というのも彼のアサインメントでは、通常と違う表記・呼び方をするからです。

これがカバー7のベースアラインメント。
普通と違うのは真ん中の3人。

* 読み:スター NBのこと
M 読み:マック MLBのこと
$ 読み:マネー WLBのこと

ほかは一緒です。
なぜそう呼ぶのかは知りません。

注意点があります。$はウィルのことと言ったのに、上の図では$はサムの位置にセットしています。
それとSAFの位置も通常と逆です。
SSはWRが多いサイドにセットします。
これは間違いではありません。
セイバンのディフェンスではこうなります。

カバー7の特徴

Split Field(スプリットフィールド)

カバー7は、これまでのカバレッジのように一つの守り方があるわけではありません。
最大の特徴は、フィールドの左右で違うカバレッジを展開することです。
これにより、オフェンスはカバレッジを読みにくくなります。
そして、常にレシーバーの数より多いカバレッジ要員をあてがうことが肝要です。

Leverage(レバレッジ)

レバレッジとは、このブログでも何度か登場していますが、位置関係のことです。
カバー7では有利なレバレッジを生み出すことを重視しています。
例えばカバー2に対してスマッシュ7を展開すると、コーナールートを走るスロットレシーバーやTEに対し、SAFは内側から追いかける不利な位置関係となります。

Smash-7

このとおり。

また、ドライブルートを走るワイドアウトに対し、カバー1となるとCBは外側から追いかける形となり、こちらも不利な位置関係です。

Hi-Lo Crossers

左のCBはしんどいでしょ。

こうした不利な位置関係はパスを通させる原因となるので、できる限り有利な位置関係を維持したままカバーしようというのがカバー7です。

ナンバリングシステム

これは最近、ぼくもそう呼ぶようにしています。
要はレシーバーの呼び方です。
昔はレシーバーの呼び方といえば、X、Y、Z、U(Xの代わりのTE)、H(スロットレシーバー)と呼ぶことが一般的だったと思います。
セイバンは外からNo.1、No.2、No.3と呼びます。
その方が分かりやすい。

ベースカバー

ベースカバーといっても左右独立したディフェンスなので、まずどういったカバレッジの役割があるかを説明します。

APEX(エイペックス)

外から数えて2番目のアンダーニースにいる選手のことを言います。
基本的に$(マネー)と*(スター)がAPEXとなります。
カバー7ではこのAPEXが重要な役割を担います。
普通はNo.2レシーバーが条件付きマンカバーの相手となります。

MEG

Man Everywhere he Goesの頭文字を取って”MEG”です。
要するにただのマンカバーです。
何があってもどんなルートでもマンカバーです。
3 by 1のシングルサイドなどに使いやすい。
なんでheは無いの?とかは聞かないで。

MOD

サイトによって略称はまちまち。
Man On Demandだったり、Man Outside and Deepだったり、Main Outside and Deepだったり。
まあ、何の略かは置いておきます。

このMODがカバー7の核をなす役割です。

CBは最初、No.1レシーバーが想定されるマンカバーの対象です。
しかし、それは条件付き。
5ヤードを基準にマンカバーの対象が変わります。
5ヤード以内のヒッチやスラント、ドライブなどはすべて切り離します。
そして、ディープの1/4を担当します。

SSはNo.2、No.3レシーバーをリードしながら自分のゾーンに来たレシーバーをマンカバーします。
スマッシュ7などはカバーする対象がいないのでNo.2をCBとサンドイッチします。

*(APEX)は最初、No.2レシーバーをマンカバーする想定です。
ただし、こちらは縦に抜ける場合はついていきません。
その代わりにフラットゾーンに来るレシーバーを担当します。
RBのスイングなども要注意。

つまり、CBとSAFはそれぞれのゾーンに来たバーティカルルート、APEXは最初にフラットへ向かうレシーバーを担当します。
そして、MODの良いところは、人数で上回ることができるという点です。
2人のレシーバーに対し3人のディフェンダー、3人のレシーバーに対し4人のディフェンダーで守ることが可能です。

Cover 7 vs Sail

セイルルート相手だとこんな感じ。
これはMODでは少し分が悪いルートか。
マックも絡めないし、SAFとAPEXが位置関係で不利になる。

No.3レシーバーがバーティカルなルートを走る場合は、マックがヘルプします。

こんな感じでMODは位置関係と人数の差で安定したカバレッジを展開します。
3 by 1と2 by 2どちらにも有効なオフェンスです。

カバー7では、片側をMOD、もう片方をMEGという風に組み合わせて守ります。

カバー7のバリエーション

ここからはカバー7で使うさまざまなアジャストをチェックします。

2 by 2用

Cut(カット)

2 by 2の時に役立つアジャストです。
簡単に言うと、CBとAPEXが役割を交換します。

CBは、MODだとコーナールートのマンカバーとなりますが、フラットに残ります。
APEXは、No.2レシーバーが縦に押してくればそのままNo.2をマンカバー、外に逃げればCBに引き渡してNo.1を引き受けます。
この図はあまり適してないね。
APEXとNo.1レシーバーの位置関係が悪すぎる。

3 by 1のシングルサイド用

Dog(ドッグ)

要はカバー2マンをシングルサイドでやるだけです。
CBはトレイルで追いかけて、FSのヘルプと合わせてハイアンドローで守ります。

Cone(コーン)

コーンはドッグとよく似ています。
こちらはCBがアウトサイドレバレッジを生かしてSAFとサンドイッチする方法。
CBはレシーバーを内に追いやりながらSAFのヘルプを求めます。

Tuff(タフ)

タフはSAFがカール/フラットにローテーションします。
つまりAPEXディフェンダーのような役割をこなすことになります。
CBはMEGです。

似たようなのをノートルダム大学もやっていました。

Jake Franklin Football氏のTwitterより

これはスマッシュ7フェイクに見事に引っかかった例。
逆サイドのSAFがカール/フラットにローテーションしています。

3 by 1のフロントサイド用

Stubbie(スタビー)

CBはMEG。
APEXはNo.2に対応していますが、No.3がフラットに出てきたらそちらに移ります。
No.2がドライブルートやヒッチの場合は、マックに受け渡して自分はフック/カールゾーンに下がってレシーバーを探します。
No.2が縦に押してきたらそのままマンカバー。
SAFはNo.2とNo.3をリードしながら縦にバーティカルルートをカバーします。

CBを除いたMODによく似ています。
違うのはフラットに反応するくらい。

ただ、このStubbieはFloodにめちゃ弱いと思います。
No.3レシーバーがフラットに出た場合、APEXはフラットに移るので、No.2のアウトがワイドオープンになります。
SSはNo.2のアウトパターンに位置関係で不利すぎる。
スローイングレーンが厳しいとは思いますが。

Stump(スタンプ)

これは最初にMODを説明したときの3 by 1バージョンなだけなので図面は省略。
スマッシュ7が来たときを想定します。
結局、CBはディープに下がってAPEXにヒッチを任せます。

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