こんにちは。
前回はカレッジフットボールで流行りのハイパワーオフェンス、エアレイドオフェンスについて学びました。
今回は”エアレイドキラー”と呼ばれる3ハイ・セーフティ・ディフェンス(以下3 SAFディフェンス)を学びましょう。
3 SAFディフェンスは、Mike Leach(マイク・リーチ)らによって有名になった後、オクラホマ大学やテキサス工科大学などのBIG Ⅻの大学で発展したエアレイドオフェンスに対抗するために生まれました。
生みの親はアイオワ州立大学HCのMatt Campbell(マット・キャンベル)。
エアレイドが幅を利かすBIG Ⅻで対抗するため同じように幅を効かせている3 SAFディフェンス。
いまやアイオワ州立のほかに、ベイラー大学やオクラホマ州立大学も使っています。
3 SAFディフェンスとは一体何か、そしてどのような動きをするのか早速見ていきましょう。
3 High Safety Defenseの特徴
前回学んだように、エアレイドオフェンスはフィールドを最大限に広く使います。
3 by 1や2 by 2、エンプティセットからパスヘビーなオフェンスを展開します。
アラバマ大学のようにタレント揃いならカバー7で十分対応できるのでしょうが、上述の大学はそこまで各ポジションにタレントを揃えていません。
このため、できる限りスキームで勝つ必要があります。
そこでオフェンスと同じようにディフェンスも広げてしまえ、というのが3 SAFディフェンスの基本的な思想です。
ダウンフィールドの人口密度を上げることでパスを投げるスキマを減らします。
そして、LBではなく3人目のSAFとすることが3-4ディフェンスとの違いです。
スピードのあるSAFを増やすことにより、パスカバー重視のディフェンスとなります。
こちらは先ほど述べたことと似ていますが、DBを増やすことがより広い範囲をパスカバーできることにつながります。
縦にも横にもフィールドを広げるエアレイドと相性が良いというわけです。
個人的にはここが普通のニッケルディフェンスやダイムディフェンスとの違いだと思います。
4-2-5や3-3-5のニッケルディフェンスは基本的にニッケルでないときと同じギャップフィットだと思います。
ただし、3 SAFディフェンスではSAFが3人です。
後で説明しますが、真ん中のSAFがキーマンとなります。
彼はSAFなのでボックスにはいません。
ということはオフェンスがランブロックのアサインメントに組み込みにくいということになります。
通常のディフェンスより楽にSAFがギャップフィットできます。
DLとLBが3人ずつで、SAF以外は3-4のようなアラインメントとなります。
このため、3-4と同じような利点もあります。
4メンラッシュにしても誰をブリッツに入れるかなどは自由度が高い。
カバレッジに下がる担当も同様です。
真ん中のSAFを自由に動かすことで、オフェンスが同じフォーメーションでも違うフォーメーションにすることも可能です。
フォーメーション
Buck(バック)
これが3 SAFディフェンスのフォーメーションのひとつめです。
DLは3-4とそっくりです。
DEはこの場合、5-テクにセットします。
このため、Buckは別名505とも言います。
ジーパンの話じゃないよ。
2 by 2のとき、OLBまたはNBはOTとスロットレシーバーまたはTEの中間地点・APEX(エイペックス)の位置にセットします。
フィールドが広い方(フィールドサイド)にサム、狭い方(バウンダリーサイド)にウィルを置きます。
SSとFSはスロットレシーバーまたはTEに対応します。
そして、真ん中のSAF、これを*(スター)と呼んだりMS(ミドルSAF)と呼んだり、JS(ジョーカー)と呼んだりしますが、彼はフィールドのど真ん中の最後尾でRBの真正面に位置します。
ここではスターと呼ぶことにしますが、彼をボックスに上げて3-4にすることもあります。
特に重要なポジションは、スターとサムです。
*はミドルSAFとNB、サムはNBからマイク、場合によっては9-テクまで担当するバーサタイル性が必要です。
ギャップフィット
右サイドへのスプリットゾーンを想定した場合、こうなります。
DEはそのままCギャップです。
両方のエッジはボックスを広げてはいけません。
ブロッカーを絞り込むことが仕事です。
NTはバックサイドのAが責任ギャップです。
これをLag(ラグ)と言うらしい。
Willはバックサイドのカットバック担当です。
MikeはプレイサイドのBギャップに突っ込みます。
例えば、パワーでGがプルしてきた場合はマイクがスピル担当です。
Samはボックスから少し離れているので、直接のギャップフィットはありません。
漏れてくるRBのためにパトロール役となります。
そして*がプレイサイドのAギャップに最後尾からギャップシュートします。
どちらかというとギャップというよりデイライトを埋める役割だと思います。
CBはバウンスアウトしてきたらランサポートに上がります。
これを見て分かるとおり、3 SAFディフェンスは1ギャップディフェンスです。
Okie “Back”(オーキー”バック”)
変わったのはRBがいるサイドのDEのみです。
彼が4iにセットします。
だから504i。
Brad Pitt(ブラッド・ピット)は出てこない数字。
ギャップフィット
今度はパワーを想定しています。
ブロッカーの線はいつもの濃さだと何がなんだか分からなくなったので薄くしています。
RBがいるサイドのBギャップに変わっています。
プレイサイドのDEはOTのインサイドリリースに伴ってプルGをスピルします。
このため、マイクとギャップを交換します。
NTは同じくバックサイドのAギャップ。
*はまずAギャップを見ますが、最終的にはデイライトに流れます。
カバレッジ
次にカバレッジを見てみましょう。
海外サイトをさまよってもパスカバーの負担は見つからなかった。
こういうこともあろうかとスプリングゲームを見ておいてよかった。
3 SAFディフェンスを使っていた大学のスプリングゲームからぼくが書き写しておいたカバレッジを紹介します。
※以前描いたものなので、*の表記がStとなっています。
Cover 3(カバー3)
こちらはカンザス州立大学のカバー3です。
FSとSSがスカイローテーションしてフラットへ。
穴のないタンパ2と思えばパスカバーは盤石です。
その代わりパスラッシュは少ないので、QBスクランブルからのミラクルプレイに要注意。
Tampa 2( タンパ 2)
これもカンザス州立大学。
正確にはわかりませんが、SAFが3人でディープを守るのでこちらはタンパ2としました。
1人当たりの担当するゾーンの広さは変わっていません。
CBとSS、FSの担当が入れ替わっています。
ブリッツ
最後にひとつだけブリッツを紹介して終わります。
これは2021年シーズンのアイオワ州立対アイオワ大学の映像から書き写しておいた。
褒めてね。
プレイの名前は分かりません。
とにかく派手なディフェンスです。
NTとRDEがスタンツするTEXもあればサムは大回りして逆サイドにブリッツしています。
TEXはDEが先に右Gを押し込んでNTがラッシュしやすいようにサポートしてあげます。
とにかくサックしてやるという熱い意志を感じます。
カバレッジはこういうふうに動いていたので一応ゾーンを書きましたが、マンマッチカバーかもしれません。
2 by 2なので、スプリットフィールドの考え方で、2人のレシーバーを2.5人で守るんじゃなかろうか。
ひとつ考えられる方法としては、CBはNo.1レシーバーがバーティカルルートの場合はマンカバー、アンダーニースならSAFにパス。
SSとFSはNo.2レシーバーにマッチし、No.2がバーティカルルートなら少し被りながら*かCBに受け渡す。
そしてアンダーニースを守るという考え方です。
あくまで予測なのでカバレッジは参考程度に読んでください。
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