こんにちは。
前回、前々回とパスカバーのさまざまなバリエーションを学びました。


今回もその続き。Cover 3が今回のメインテーマです。ディープを3人で守るシンプルなゾーンカバー。どんなレベルのアメフト経験者でもCover 2と並んでよく使ったカバレッジシェルではないでしょうか?
以前にも紹介したバリエーションに加え、新たに調べたものもあります。基本のカバーでも案外知らないことは多い。しっかり復習しましょう。
Cover 3の基礎

Deepを3人で割るからCover 3。Cover 2より1人増やした。当然Underneathは4人となります。
CBは7-8ヤードにセットしてBailテクニックでDeepへ下がります。Bailというのは、腰を切ってWRを横目に見ながらQBをリードする下がり方。ディスガイズや初速を殺すためにPressセットするパターンもあります。いずれにせよ、担当するのは両外の1/3 Deep。ランサポートの義務はありません。
FSはDeepのど真ん中、MOFを担当します。SlotやTEのバーティカルルートは彼の責任です。とにかくDeepのどのルートも抜かれてはいけません。Cover 1のときとよく似ています。
SSとNB、もしくはOLBはCurl to Flatを守ります。Curl見てからFlatということ。Slant-FlatやCurl-Flatといったルートコンビネーションの場合、いっぺんに両方をカバーすることはできません。キャッチされたら嫌な方、つまり奥から手前へと順番にカバーすることとなります。SSはランのとき、Force Man/Open Containの役割も担います。ラン・パスの判断はTEをリードします。
ILBの2人は10-12ヤードのハッシュ外側くらい、Middle Hookに下がります。DigやDriveなどのクロス系ルートをカバーします。あとはチェックダウンに出てきたRBやTEを仕留めるのも彼らの役目です。
これが大まかな役割。Cover 3の弱点というとFlatです。Flatディフェンダーは、Curl/Flatの役割で、すぐにFlatへ飛ぶことができません。そして、Fast 3なんかにはレバレッジでもスピードでも勝てない。ほかにも弱点はありますが、それはまた後ほど。
PressセットのCover 3はLegion of Boom時代のPete Carroll(ピート・キャロル)率いるシーホークスが得意としていたカバーです。実際に彼らが使っていたカバーはこんなに単純ではありませんが。
Cover 3のバリエーション
3 Sky

2 HighシェルからのCover 3。役割は普通のCover 3と同じ。ディスガイズに使います。
CBはCover 2と同じようにセットしたりしてプレスナップリードを難しくする効果があります。SSはニョロニョロっとCurlに降りてきます。FSは斜めに下がってMOFを守ります。
いい動画も見つからなかった。
3 Buzz

SSがMiddle Hookに降りてくるタイプのローテーション。Cover 1 Robberと同じような意味合いがあります。ディスガイズできる。
3 Cloud

片方のCBはCover 2のテクニック、残るCBとSAFでDeepを守る3 Cloud。
なんのためかと言うと、ディープスレットのWRを邪魔するためです。一種のダブルカバーとなります。Cover 2テクニックを使うCBはバンプを打ってWRのルートランを潰してやります。こうすれば裏を守るCloudのSAFがカバーしやすくなります。その後CBはFlatにSinkします。
こちらはDouble Cloudとかいうらしい。
Rip/Liz

ここからはマッチカバー。俗にいうNick Saban(ニック・セイバン)の“Rip/Liz”というやつです。これはまた別に記事をつくろうかと思っていますが、Cover 3といえばこれは外せないので、ここでもサラッと紹介しときます。
いわゆるPattern Match Coverと呼ばれる類のカバレッジです。どうしてもCover 3の構造的に守れないパスパターンはいくつか存在します。そういった不具合を解消するのがPattern Matchです。こういうマッチ系のカバーはNFLでもカレッジでもメジャーな守り方になっています。
プレスナップの状態は普通の2 High Shellです。これはセイバンお得意のCover 7と同じ状態にしています。
CBは基本的にNo.1レシーバーとマッチしますが、1/3 Deepを守ります。No.1レシーバーが縦に押してきたらそいつをM/M。
FSは普通のCover 3と同じくMOF。
SSと*(セイバンスキームではNBをStarと呼ぶ)はCurl/Flatなんですが、No.2レシーバーとマッチします。外に行ったり縦に押してくるようならNo.2をM/M。
ILBの2人、Macと$(これもセイバンスキーム独特の呼び方、MikeじゃなくてMac、WillじゃなくてMoney)はNo.3とマッチしており、そいつがパスコースに出るようならM/M、残った方はUnderneath Holeを埋めます。
ちなみにRip/LizはSSが上がるサイドを表します。RとLで分かるでしょ?今回の場合、オフェンスから見て右、つまりディフェンスから見て左サイドのSSが上がっているので”Liz”となります。逆なら”Rip”。プレスナップの状態からRipまたはLizコールでどちらにSSが上がるのか全員に伝えておく必要があります。

なぜこういうカバーが必要かというと、2 by 2のFour Verticalというルートコンビネーションがあるからです。単純な4タテのコンセプトですが、Cover 3はDeepに3人しかいません。カバー要員が1人足りず、放っておいたら一生やられっぱなしになってしまいます。このため、Rip/Lizというカバーが生まれました。
先ほどの役割と照らし合わせると、Curl/Flatディフェンダーの*とSSがNo.2レシーバーをM/Mカバーできます。FSは自分の後ろさえ抜かれないように気をつけながらヘルプするだけ。
Rip/Lizのキモは、ILBの2人にNo.2レシーバーとマッチアップさせず、必ずOverhang(SSと*のこと)をつくること。Overhangの2人は一応Force/Containという役割ですが、ランが第一ではない。基本的にはボックスの6人がランを処理してOverhangがRPOやプレイアクション、パスに対応します。従来の4-2-5ニッケルディフェンスでは、LBがランとパスの狭間で攻められるポジションだったわけですが、これを解消することができます。
3 Mable

これもマッチカバー。対3 by 1特化型の3 Mable。
簡単に説明すると、3人のレシーバーがいるTripsサイドがゾーンカバー、シングルサイドがマンカバーという左右できっぱり分かれたカバレッジシェルです。
具体的な役割ですが、上の一覧ではなんのこっちゃという感じになってしまった。ただあれ以上シンプルに書くとこができなかった。まず、Tripsサイドから見ていきましょう。
CBはNo.1レシーバーにマッチしています。縦に押してくるようならそいつをM/M。Rip/Lizと同じ。
*はNo.2にマッチ、彼がインサイドに行くなら放ったらかして自分はFlatというかBuzzというかそのあたりをカバーします。アウトサイドに来たら全力でカバー。
SSはNo.3にマッチします。彼がインサイドならMikeに受け渡します。アウトサイドならM/M。
MikeもNo.3とマッチ。彼がインサイドに来るならROBOTテクニックでついていきます。ROBOTは後で説明します。アウトサイドならStrong sideのHookをカバー。
シングルサイドに移ります。CBはMEG(Man Everywhere he Goes)、つまり何があってもNo.1をM/Mということです。
Willは上の図の場合、RBとマッチします。RBが自分のサイドのパスコースに出るようならM/M、逆サイドに出るならNo.1レシーバーのクロスルートを守ります。FSはMOF。
言葉だけで説明しても伝わりにくい。実際に図面で見てみましょう。

左からFade、Out、Outのルートだとこのようになります。CBは当然Fade、*はNo.2のOut、SS がNo.3のOut、MikeはStrong Hookを埋めます。
シングルサイドはSlant-Flatの組み合わせです。マニュアルどおりに対応するとCBはSlant、WillはFlatをカバーします。

続いては“999”コンセプト。CBはFade、*はFlatゾーン、SSはBuzz、FSがNo.2のSeam、MikeがTEのDeep Overを守ります。ここでROBOTというワードが出てきます。
ROBOTはRoll Over and Backのこと。「ん?」となる気持ちも分かります。別に頭文字取ってもROBOTにはならない。身体をクルッとまわしてついていくテクニックで、ようはBaseball Turnするわけです。横文字を横文字で説明するな!下の動画の50番を見てください。
最後は3 Mable Beaterを見てみましょう。
ビューティフォーな裏のつき方。
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