こんにちは。
前回までにCover 1からCover 7までを紹介しました。
今回はCover 6 (QQH)とCover 8 (HQQ)について学びましょう。どちらもZone-Matchカバーに分類されます。なぜセットなのかというと、カッコ内を見てもらえれば分かるようにCover 6とCover 8は同じスプリットフィールドの表裏一体というか左右で反転したカバレッジシェルだからです。NFLではVic Fangio(ビック・ファンジオ)のツリーに連なるコーチたちが好んで使います(Brandon Staley(ブランドン・ステイリー)とかEd Donatell(エド・ドナテル)とか)。
それはともかく、それぞれのカバレッジがどういうものか見てみましょう。
※それぞれのカバレッジのバリエーションも追加したいと思っていますが、まだ勉強中なので随時更新という形にします。
Cover 6 (QQH)
Cover 6は以前、ゾーンカバーについて紹介した時にも軽く触れましたが、Cover 4とCover 2と足したものです。ストロングサイド(TEの場所は関係なくレシーバーが多いパスストロングサイドのこと)はCover 4、ウィークサイドはCover 2という具合です。
ディープゾーンを3人で割るのですが、単純な1/3ずつではありません。Cover 4とCover 2でフィールドを半分に割っています。このため、ディープはまず1/2に分割されます。そこからストロングサイドはさらに半分に分けます。というわけでストロングサイドは1/4と1/4に分けられます。
こう見てもらえれば分かりやすいかな?Cで半分に割った後、さらに半分こする感じ。1/4と1/2を英語に直すとそれぞれquarter, halfとなります。だからCover 6はQuarter – Quarter – Half、略してQQHとも呼ばれます。
Cover 6の役割
では、役割を確認していきましょう。
まず、Cover 4サイドのCBは、No.1レシーバーとマッチしています。#1レシーバーがバーティカルルートなら#1をM/M、アンダーニースのルートなら1/4ディープに下がります。Cover 7のMODと似た役割です。
Cover 2サイドのCBは、#1レシーバーがバーティカルルートならFSがカバーできる位置までCarryします。ようはFSがカバーするまで#1についていくことです。その後、Flatディフェンダーとなります。アンダーニースのインサイドルートならFunnelします。外からついていくことね。アウトサイドルートならそのままM/Mとなります。
SSは#2レシーバーとマッチします。#2がバーティカルルートならM/M、そうでなければ#1レシーバーをチェックします。
FSはウィークサイドのディープ全部。このため、とびきり後ろに下がることが多い。すべてのバーティカルルートのトップを守ります。
SamはCover 4と同じくQuarter Flatを守ります。基本的には#2レシーバーとマッチして、アウトサイドに逃げるならインサイドから追いかける。#2がバーティカルならCarryしてからFlatへ。
Mikeは#3レシーバーとマッチ。#3がバーティカルならM/M、クロス系ルートならRobotでついていきます。そのほかアンダーニースのクロスルートをWall-Offする役割です。
Willはウィークサイドの#2レシーバーとマッチ(図の場合はRB)。#2がFlatに逃げるならCBに任せます。バーティカルルートならCarryします。あとはHookディフェンダー。
Cover 6のメリット
これまで役割を述べてきましたが、Cover 6のメリットはなんでしょう?
メリットは人数差のあるフォーメーションに強いこと。図に示したように、3 by 1は片側に3人のレシーバーがいます。改めて図で見てみましょう。
こう見ると分かりやすいかな?3 by 1のフォーメーションに対し、ディフェンスはパスストロングサイドに4人、ウィークサイドに3人います。パスコースに出るオフェンスの選手は5人が最大です。3人サイドに4人のディフェンダー(4 over3)、2人サイドに3人のディフェンダー(3 over 2)を配置できます。仮にRBが3人サイドにセットして4 by 1の形となっても人数は足ります。
同じ考え方で、フィールドサイドに多くの人数を配置できるというメリットがあります。
NFLと違ってNCAAルールを採用するCFB以下多くのフットボールでは、ハッシュの間隔が広いです。このため、広い方のフィールドサイドと狭い方のバウンダリーサイドの差が大きくなります。だから、フィールド内の人口密度を考えると広い方に人数が多い方が良いというわけです。ただし、この考え方は最近、バウンダリーサイドに多くのレシーバーを配置するFIB (Formation Into Boundary)のプレイが多いため、あまり考えなくてもよいかもしれません。
Cover 8 (HQQ) (Trix)
Cover 6の反対がCover 8です。パスストロングサイドがCover 2となります。QQHの反対、Half – Quarter – QuarterだからHQQとなります。実際にはウィークサイドのLBとCBはM/M、残りでストロングサイドを見るようなカバレッジです。大事なことはNBをストロングサイドに配置すること。スロットレシーバーとマッチさせないといけません。OLBではミスマッチになってしまう。
Cover 8の役割
ストロングサイドのCBはCover 2の要領です。#1レシーバーがバーティカルルートならCarryします。実際の映像を見ると結構Cover 3に近い動きが多いです。
ウィークサイドのCBは1/4 Deepと書いておきながらほとんどM/M。#1レシーバーがどんなルート走ろうが割とタイトにカバーする感じです。
SSはディープの1/2を担当します。#1と#2のバーティカルルートは彼の担当です。
FSはウィークサイドの1/4ディープを担当します。ところが“Trix”コールが入るとストロングサイドの#3レシーバーのバーティカルルートをケアします。Cover 8の目的は主にこのTrixカバーだと思います。
NBはCurlゾーンを担当しますが、#2のバーティカルルートはCarryします。
MikeはMiddle Hookディフェンダー。#3のバーティカルルートをCarryしたり、クロスルートをWall-Offするのが主な役割です。
WillはQuarter Flatと書いておきながら、ほとんど#2レシーバーのM/M。大体がRBとマッチします。
Cover 8のメリット
Cover 8はHQQとも呼ばれますが、単純にCover 6の反対とも言い難いカバレッジです。先ほども言ったようにウィークサイドはほとんどM/Mとなります。
重要なのはFSが”Trix”コールによってストロングサイドの#3レシーバーのバーティカルをカバーすること。これはCover 6とは違います。Cover 6では#3のバーティカルをMikeがカバーすることになります。つまりここが弱点となります。それを潰してしまおうというのがCover 8です。実質、ストロングサイドをカバーするディフェンダーは5人いることになります。3 by 1のフォーメーションにはめっぽう強い。
赤色に着色した選手がストロングサイド、青色がウィークサイドを担当します。
Cover 6, 8 Beater
Cover 6とCover 8の弱点は、Cover 2とCover 4を考えてもらえれば分かります。Cover 2サイドはTurkey Hole、Cover 4サイドはFlatが弱いね。それとエースレシーバーに1 on 1を強いることができればそれもヨシ。
Cover 2サイドはSmash-7、Cover 4サイドはMillsといった具合です。
いま紹介したパスコンセプトの狙いどころは下のブログで紹介しています。
コメント