こんにちは。
スプレッドオフェンスと一口に言ってもいろいろあります。
以前のAir Raid Offense(エアレイドオフェンス)や随分昔に紹介したPro-Style Spread(プロスタイルスプレッド)もスプレッドです。
今回はスプレッド流派の異端児、Smashmouth Spread(スマッシュマウス・スプレッド)を紹介しようと思います。
スマッシュマウスという戦術が昔ありました。
ヘビーパワーランニングゲームによるハイパーフィジカル戦術です。
パワーやカウンター、アイソ、トリプルオプションなど考えられる限りのフィジカルなランニングゲームを中心にゲームを展開することで、試合に主導権を握ってしまえという考え方がスマッシュマウスです。
スマッシュマウス・スプレッドはその名のとおり、スプレッドフォーメーションから繰り出すスマッシュマウスオフェンスを指します。
10年前から4年くらい前までは強豪校も使っていました。
最近はあまり見ないかな。
スマッシュマウスは、2000年代半ば、テキサス州の高校のHCだったChad Morris(チャド・モリス)が編み出しました。
モリスは高校のHCに雇われてすぐは燦々たる成績だったそうで、そこからアーカンソー大学のHCだったGus Malzahn(ガス・マルザーン)に教えを受けた末にトリプルオプションを中心としたランオフェンスをつくりだしたそうな。
そこから11年にクレムゾン大学のアシスタントに就任するとスマッシュマウスは一気に旋風を巻き起こし、同大学のHCに上り詰めました。
その戦法は今風のスプレッド体型からモーションを使用したり、アップテンポなオフェンスを展開しながらそのプレイはパスではなくオールドスクールなランでした。
ではどんな特徴なのか、どんなプレイが多いのか見ていきましょう。
特徴
当然だろ!という話ですが、オフェンスは左右に広がっています。
3人のレシーバーがセットすることが多い。
これは普通のスプレッドと変わりません。
まあ、これもレシーバーが3人ということはこうなるわけです。
一般的にはRB2人、TEなし、WR3人の20パーソネルかRB1人、TE1人、WR3人の11パーソネルが主流です。
TEはFB的な役割を求められることもあります。
別に昔のスマッシュマウスがゾーンを全く使わないことはないと思いますが、現代フットボールではインサイドゾーンが重要となります。
パワーやアイソ、カウンターはもちろん使います。
それに加えてインサイドゾーン、ゾーンリードなどのゾーンランも使います。
ラン重視だからと言ってWRは飾りではありません。
縦の脅威となるフィジカルやスピードの秀でたレシーバーが重要となります。
そして、実際にここ一発でバーティカルな一撃をお見舞いします。
彼らがいるおかげでディフェンスはそう簡単にラン重視のディフェンスにすることが難しくなります。
ラン
スマッシュマウスの中心はなんと言ってもランです。
よく使われるプレイを紹介します。
Triple Option(トリプルオプション)
スプレッド体型ではありませんが、トリプルオプションの場合はある程度仕方ない。
ブロッカーが要りますから。
これはモリスが初期に使っていたタイプのプレイだそう。
説明は以前もしたので軽めに。
QBとFB、TBの誰かがボールを持ちます。
まず右のDEがダイブに食いつけばQBがキープ、そうでなければFBに渡します。
その次にウィルがピッチRBに反応すればQBキープ、その逆はピッチとなります。
昔からあるプレイですが、よく訓練されたトリプルオプションはいまでも脅威です。
Inside Zone(インサイドゾーン)
説明不要のインサイドゾーン。
スマッシュマウスは直線的なランプレイを好むほか、オプションも豊富です。
このため、アウトサイドゾーンよりインサイドゾーンの方が都合良い。
NTやDTをダブルチームでブロックすることが重要です。
ダウンヒルなランゲームを展開するためにはDLを支配することがマスト。
そしてLBをブロックしてRBの走路を切り開きます。
Inside Zone Read(インサイド・ゾーンリード)
QBとRBのどちらかがキャリアーとなります。
ウィルがRBに食いつけばQBキープ、逆ならハンドオフ。
OLとディフェンダーの数が合わなくなった場合、例えばOLが6人、ボックスのディフェンダー7人となると図面ではもう負けています。
これを解消するためにゾーンリードが使われます。
こうすればボックスに7人のディフェンダーがいてもQBを含めた8人のオフェンスで対抗できます。
Inverted Power Veer(インバーテッド・パワー・ビアー)
インバーテッド・ビアーでもパワー・リードでも結構です。
同じプレイを指します。
これも先ほどと同様、エッジを見てどちらがボールを持つかQBが判断します。
Iso(アイソ)
HBがリードブロッカーとなってボックスを半分に割くアイソ。
直線的なランプレイでディフェンスを痛めつけるプレイです。
パス
次はスマッシュマウスが得意とするパスパターン。
別にパスが少ないからってパスパターンも少ないわけじゃないよ。
特徴的なプレイが少ないってだけです。
Bubble Screen(バブルスクリーン)
No.3レシーバーがスイングしてブロッカーの後ろに回るタイプのスクリーンです。
ブロッカーが泡のようにぼこぼこっと湧いてくるからバブルスクリーンと聞いたことがあります。
ほんまかいな?
インサイドゾーンのフェイクをかましているのでLBはプレイから切り離されます。
いまはこのパターンまんまのRPOがあります。
インサイドゾーンにウィルが引っかかったらバブルスクリーン、逆ならハンドオフという具合です。
ブロッカーとディフェンダーの数が重要です。
右のインサイドゾーンを見ると、ブロッカーとなるOLはTEを含めて6人です。
ボックスディフェンダーは5人、オープンコンテインのCBを含めると6人でちょうどトントンの状態です。
ここでウィルに来られると人数差で負けます。
だからゾーンに食いついたらスクリーンとなります。
逆に左のスクリーンサイドは、ブロッカーが2人とディフェンダーが2人です。
こちらもウィルが来ると人数負けします。
だからウィルをキーにRPOするというわけです。
バーティカル系のパス
長いバーティカルのパスがランプレイとの緩急をつけます。
今回はモリスがHCだった時代のクレムゾン大学のプレイを紹介します。
バブルスクリーンフェイクの2人バーティカルです。
インサイドゾーンフェイクのバブルスクリーンフェイクのロングパスとなっております。
何回フェイク入れる?
この時は確かSammy Watkins(サミー・ワトキンス)がバッチリキャッチしていました。
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