こんにちは。
前回はルートツリーについて整理しました。

今回はそのルートを組み合わせたルートコンビネーションについて学ぼうと思います。
さて、それぞれのルートの名前は分かったけど、さまざまなルートを組み合わせたパスプレイの名前が分からない。
そんなときは多々あると思います。
というかほとんどのパスプレイの名前なんか分からない。
ルート自体はアサインメントに書くことはできます。
大まかなプレイのコンセプトとか狙いどころは分かる、でも細かい部分までは分からない。
というわけで、さまざまな海外サイトやカレッジ、NFLのプレイブックを漁って勉強したパスコンセプトを紹介します。
※パスコンセプトの絵にはルートの名前やレシーバーが走る深さ、QBのリードプログレッション (見る順番)、注意書きを書いています。絵の下にも同じことを書いておきます。
3歩のパス
3歩のパスとは、QBが3歩ドロップバックしたタイミングで投げるパスのこと。(ショットガンなら1歩)
決め打ちで投げる場合もあれば、しっかり確認する場合もありますが、いずれにせよ早いタイミングで投げるため、パスラッシュが届きにくいのが長所です。その代わり5 Yds前後でブレイクするルートで構成されるため、ロングゲインを狙うパターンは少なめです。
1st & 10や3rd & 5前後に使うことが多いと思います。
Dragon

Position | Route | Checkpoint |
X | Slant | 5 Yds Break |
H | Flat | 2-3 Yds |
B | Check Down | 3 Yds Stop Over Center |
Y | Flat | 2-3 Yds |
Z | Slant | 5 Yds Break |
QB Read Progression : X→H→B or Z→Y→B
Slant-Flatの組み合わせをWest Coast OffenseではDragonと呼びます。
QBはSlantからFlatへとリードします。RBは念のためくらいで実際にはサイドライン見てから真ん中に視線を戻すのは合理的ではないかな。
XとZは相手のカバーによって微妙にルートが変わります。おそらくM/Mのときは横気味に走るのだと思います。横に走った方がマンカバーはセパレーション取りやすいから。
このパスコンセプトは一般的にCover 3 Beaterと言われています。つまり1st & 10で使うと効果的です。とはいえどのカバーでもある程度は対応できる万能コンセプトです。
Lion

Position | Route | Checkpoint |
X | Slant | 5 Yds Break |
H | Slant | 1 Step |
B | Check Down | 3 Yds Stop Over Center |
Y | Slant | 1 Step |
Z | Slant | 5 Yds Break |
QB Read Progression : H→X→B or Y→Z→B
Double Slantのことです。West Coast Offense用語ではLionと呼びます。
QBはInside-Outでリードします。RBは同じく念のためくらいで見る必要はありません。プロテクションに自信がなければパスコースに出す必要もありません。
レシーバー陣は内と外で少し違います。インサイドレシーバーは1歩のSlant、アウトサイドは5 Ydsでブレイクします。
Cover 2または2 Manに強いパスコンセプトです。ということは3rd & Shortに強いプレイとなります。インサイドレバレッジを確保できれば勝負あり。リリースが勝負です。
2122

Position | Route | Checkpoint |
X | Slant | 5 Yds Break |
H | Slant | 1 Step |
B | Check Down | 3 Yds Stop Over Center |
Y | Flat | 2-3 Yds |
Z | Slant | 5 Yds Break |
QB Read Progression : H→X→B or Z→Y→B
2122はルートツリーの番号から付けられた名前です。Slantが2番、Flatが1番で、Slantが3人、Flatが1人だから2122。
LionとDragonを組み合わせたプレイです。どのカバーが来てもなんとかなる万能コンセプト。
QBのリードはそれぞれのコンセプトと同じ。プレスナップでカバーを読んだら強い方を選んでください。
Y-Stick

Position | Route | Checkpoint |
X | Corner | |
B | Check Option | vs Zone : 5 Yds Stop vs Man (O/S Leverage) : 5 Yds In vs Man (I/S Leverage) : 5 Yds Out |
Y | Stick | vs Zone : 6 Yds Stop vs Man : 6 Yds Out |
H | Fade | MUST Outside Release |
Z | Hitch | 5 Yds Break |
QB Read Progression : Y→H→Z
Yのルート名がこのプレイの名前となっています。
QBはInside-Outでリード。
肝心のYはカバーによってルートが変わります。Zone相手なら6 Ydsでストップ。M/Mならサイドラインに向かって流れます。これがY-Stickのキモです。HはFade、ZはHitchとなっており、この絵の場合はM/Mに強い設計となっています。HはStickの邪魔をしないために必ずO/Sリリースすること。
ZoneとManどちらにも上手く対応できることから試合の最初に使うプレイとして優秀です。どのようなディフェンスで来るのかを見極めるには最適なコンセプト。ついでにHなどをモーションで引っ張ってくればモーションへの対応も確認できるため、試し打ちのプレイとして使えます。
Disk

Position | Route | Checkpoint |
X | Thunder | 6 Yds Stop vs Bump : O/S Release→8 Yds Stop vs Cloud : Fade (Alert) |
B | Check Down | 3 Yds Stop |
Y | Stick | vs Zone : 6 Yds Stop vs Man : 6 Yds Out |
H | Stick | vs Zone : 6 Yds Stop vs Man : 6 Yds Out |
Z | Fade | MUST Outside Release |
QB Read Progression : H→Y→B
Kyle Shanahan(カイル・シャナハン)のオフェンスでよく使われるコンセプトだそうです。2人のStickでHorizontal Stretchを効かせながらManカバーにも強いプレイです。
QBはZを除いてOutside-Inでリードします。プレスナップでXが1 vs 1ならXに投げても構いません。
右サイドから説明していくと、ZはFadeを走りますが、メインのターゲットではなくCBを引っ張ることで後のStickのRAC (Run After Catch)のレーンを空けておきます。Hが1番最初のターゲットとなります。Yは予備、RBはさらに予備。
XのThunderというルートはオプションです。CBがかなりのPress M/Mでドギツいバンプを打ってくるようなら、O/Sリリースからの8 Ydsストップ、CloudカバーならFadeでSFを引っ張ります。
上のY-Stickと比べてStickが2人なのでメインのターゲットが2人に増えたことになります。West Coast Offenseではテッパンのプレイです。その分Stickくらいしか狙えないことになります。その保険としてThunderがあるわけです。
Spacing

Position | Route | Checkpoint |
X | Post | 15 Yds Break |
H | Arrow | 2-3 Yds |
Y | Curl | 10 Yds Over Center |
Z | Curl | 10 Yds Get Width |
QB Read Progression : H→Z→Y→X
Bunchから散らかるように広がるパスコンセプト。右側の3人でHorizontal Stretchをつくりだします。
QBはOutside-Inでリードします。
YとZはそれぞれCurlを走るわけですが、お互いが十分な広がりをつくることでアンダーニースのディフェンダーをストレッチさせます。HはさらにストレッチさせるためにArrowルートを走ります。Xは多分リードが間に合いません。
Bunchにすることで、Zone、Manどちらのカバーにも強くなります。Zoneは先ほど言ったとおりHorizontal Stretchを効かせられます。M/MならBunchからのリリースでナチュラルピックとなり、HのArrowが空きやすい。
Snag

Position | Route | Checkpoint |
X | Slant | 5 Yds Break |
H | Arrow | 2-3 Yds Hot |
Y | Corner | (Alert) |
Z | Snag | vs Zone : 6 Yds Stop vs Man : 6 Yds Out (Alert Pick) |
QB Read Progression : Y→Z→H
Zのルートがキモとなるパスコンセプトです。
QBはトライアングルリードとなります。つまりディフェンスもY、Z、Hがつくる三角形によってVertical, Horizontalにストレッチされられるわけです。
YはCornerですがこれはAlert、つまりおとりです。HはArrow、そしてブリッツが来た場合のホットルートです。メインのZは6 Yds前後めがけて斜めに入ってきてからストップします。ここまではただのSpotコンセプトです。
Snagは、ZがM/MならStickのようにサイドラインへ流れます。そしてこのZはM/Mのとき、Alert PickとしてHのマッチアップ相手を邪魔することができます。
こちらもSpacing同様、Zone、Manどちらにも強いプレイです。だいたいBunchという時点でディフェンスのピックを狙っていることが丸わかりですが。
Hank

Position | Route | Checkpoint |
X | Curl | 12 Yds |
T | Check Swing | |
Y | Over | 6 Yds Hot |
F | Arrow | 2-3 Yds |
Z | Curl | 12 Yds |
QB Read Progression : Y→X→T or Y→Z→F
Hankコンセプトもシャナハンお得意のプレイです。YがOver CenterにSitするルート以外は左右がCurl-Flatで構成されています。Air Raid Offenseで言うところの96 Yです。
QBはInside-Outでリードします。ILBの動きでリードするサイドを決めてください。Yに釣られたサイドのCurl-Flatへと目線を移すこと。
Yはフィールドのど真ん中でストップすること。これでILBを引っ張ります。XとZはI/Sリリースの方がいいと思います。外に広がりすぎたらせっかくのYの意味がなくなります。
HankはCover 3Beaterとして有名です。ILBがYに引っ張られればCurlが空くし、そうじゃなければYが空きます。両方空いてなければArrowとSwingからのRACが狙えます。
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