Kyle Shanahan’s Offense

こんにちは。

さて、NFLの話。今回はNFLで最も重要なオフェンスマインドのひとり、49ers HCのKyle Shanahan (カイル・シャナハン)の戦術について学びましょう。

シャナハンといえば、NFLでメジャーな戦術のひとつであるWide Zone Offenseの第一人者であります。Outside Zoneとプレイアクションパス (PAP)を軸としたオフェンスがNFLでかなり強力な戦術となっています。シャナハンのほかにラムズのSean McVay (ショーン・マクベイ)やパッカーズのMatt LaFluer (マット・ラフルアー)なども同門です。

では早速。

目次

Kyle Shanahanという人物

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キャリアについて

カイル・シャナハンは、かの有名なMike Shanahan (マイク・シャナハン)の子どもとして、パパシャナハンがミネソタ大学でコーチをしていた際、ミネソタ州で生まれました。

選手としてはデューク大学とテキサス大学というかなりの名門大学でWRとしてプレイしていたそうです。その後プロに進むことはなくUCLAでGA (Graduate Assistant)としてコーチングキャリアをスタートさせます。

その翌年、いきなりバッカニアーズでプロでのキャリアが始まります。親父の下ではなくJon Gruden (ジョン・グルーデン)の弟子としてですが。06年からはGary Kubiak (ゲイリー・キュービアック)の下でWRコーチ、QBコーチを務め、08年には最年少OCに就任します。

その後はレッドスキンズ (現コマンダーズ)、ブラウンズ、ファルコンズでOCとして従事した後、17年に49ersで念願のHC職を手に入れました。その後の活躍はご存じのとおり。

HCとしての記録は52勝46敗、勝率は.531とそこまで良くはありません。というか強いシーズンと弱いシーズンの差がハッキリしています。

キャリアを通して親父と一緒に仕事をしたのは意外にもレッドスキンズ時代くらい?

オフェンスの特徴

彼のオフェンスは、なんと言ってもワイドゾーンオフェンスと呼ばれる現代NFLでも主要オフェンスのひとつに数えられる戦術が有名です。現代NFLのオフェンスはワイドゾーンとAndy Reid (アンディ・リード)系統のスプレッドオフェンス、Bill Belichick (ビル・ベリチック)系統のオールドスクールなプロスタイルに分けられるとの記事を以前読んだことがあります。そのひとつに数えられるほど重要なオフェンスとなっています。このうち、ワイドゾーンとスプレッドオフェンスはウエストコーストオフェンスの派生形と言われています (コーチングツリー的に)。

ワイドゾーンは、簡単に言うとOutside Zone (OZ)とPAP (Play Action Pass)を軸とした戦術です。OZでディフェンスを左右に振りながらPAPでドカンと奥を狙ったりさらに左右に振ったりします。シャナハンのオフェンスは特にモーションが多い。JETモーションなどを使うことで勢いを生かしたり、ディフェンスにアジャストするタイミングを与えません。

49ersがほかのチームと違うのはそれぞれの選手がさまざまな役割をこなせるということです。1人の選手が複数ポジションをこなせるということはディフェンスのマッチアップが困難になります。WRがHBの位置にセットすればLBはパスで負けやすいし、WRをこなせるRBやTEもできるFBはパーソネルを入れ替えずアップテンポなオフェンスを繰り出すことが可能となります。オフェンスはパーソネルを入れ替えずともいろんなプレイができればディフェンスを打ち負かしやすいのです。

コーチングツリー

シャナハンには多数の弟子や兄弟分がおり、それぞれがNFLで要職に就いています。兄弟分とその弟子を合わせた主要な人をまとめるとこんな感じ。

Sean McVay (ショーン・マクベイ):ラムズHC
Matt LaFleur (マット・ラフルアー):パッカーズHC
Zac Taylor (ザック・テイラー):ベンガルズHC
Kevin O’Connell (ケビン・オコネル):バイキングスHC
Mike McDaniel (マイク・マクダニエル):ドルフィンズHC
Robert Saleh (ロバート・サラー):ジェッツHC
Mike Lafleur (マイク・ラフルアー):ジェッツOC
DeMeco Ryans (デメコ・ライアンズ):テキサンズHC

マクベイやラフルアーは兄弟分的な存在と認識しています。

マクダニエルは試合を見た感じそこまで似ているとは思いませんでしたし、テイラーもガラリとオフェンスを変えたような話を聞いたことがあります。ライアンズはディフェンスマインドのコーチなのでオフェンスはまた別問題かと思います。

まあとにかくこのくらいの人物には影響を与えており、シャナハン/マクベイの要素が大なり小なり受け継がれているのがこのあたりのコーチだと思ってください。

Play Call System

まずはプレイコールから見てみましょう。実際のプレイを例に紹介します。

ウエストコーストオフェンスは読み方さえ分かれば読み取りやすいです。コーチによって各部分の表し方は違いますが、書き方というかルールと順番は共通している部分が多いです。

プレイ名の読み解き方

上の大きな字が実際のプレイ名です。プレイ自体はWeakサイドのOutside Zoneのひとつです。

[21] (TOSS) 19-18 WEAK

プレイ名の説明から入らないと後のプレイコールでつっかえるので、最初はプレイ名の説明から。

[ ]内の数字はパーソネルを表します。この場合、21ですからRB2人、TE1人の21パーソネルとなります。WRの数はRB、TE、QB、OLの数から逆算すれば分かるので書きません。

続いて(TOSS)ですが、“( )”は「●●にするパターンもありますよ」という意味です。49ersのOutside Zoneはハンドオフとトスの2パターンがあり、同じプレイでもRBの渡し方を変えます。

19-18はプレイサイドのこと。下一桁の数字によってプレイが変わりますが、9-8はOutside Zoneのルールでブロックするプレイです。偶数は右、奇数は左のプレイです。10の位はちょっとよく分からない。分かる方がいれば教えてください。

最後のWEAKがプレイ名です。FBがWillをブロックするOutside Zoneのこと。

[21/12] 19-18 WANDA (Z-Y-X-F DART) (OSCAR)

次は少し長めのプレイ名です。

[21/12] 19-18 WANDAまでは先ほども説明したとおりです。WANDAがプレイ名ね。

(Z-Y-X-F DART)というのは( )が示すとおり、この要素も入りますということです。DARTは1歩のSlantです。ディフェンスのセットによってSlantに投げれば高確率で通る状況が発生します。上図のように走り込む先は誰もディフェンダーがいません。この場合Y DARTを入れてしまえばOutside Zoneにせずとも楽にゲインできます。プレスナップでイケると判断すればそちらに投げます。要はプレスナップのRPOです。

(OSCAR)というのはプレイサイドを変更する合図です。ウィークサイドへのFSのローテーションなどでブロッカーの人数が足りない場合、プレイサイドを変更します。細かくは個別のプレイの紹介時に説明します。

プレイコールの読み解き方

それではプレイコールの読み方を見ていきましょう。

Run

I RT BOOK 19 WEAK

I RT BOOKはフォーメーションです。IがPro Iを表します。Pro Iは21パーソネルで、TEがフォーメーションのコアにくっついた状態、WRが両方のサイドにセットしたフォーメーションのこと。NFLではよく見る、アメフトで1番最初に知るフォーメーションと言っても過言ではありません。
RTはTEがセットするサイドです。これはだいたいどこのチームも同じルールのはず。フォーメーションを表す用語の後にLTとかRTが付いているのはTEがどちらにセットするかを指示しています。
BookはWRのスプリットのこと。フィールドにヤードの数字が書かれていますが、あれをナンバーといい、その内側にセットするNasty Splitというやつです。どれくらい内側にセットするかの説明は見つかりませんでしたが、だいたい2 Ydsくらいだと思います。

19WEAKは先ほども伝えたとおり、プレイサイドとプレイです。

PAP

[11] STACK RT CLOSE Y LT P14 WANDA MAN X DAGGER

今度はPAPのプレイコールです。

[11]はパーソネル、STACK RT CLOSEはフォーメーションです。STACKは左のレシーバーのフォーメーションで、Fがフォーメーションのコアから5 Yds離れた位置でLOSにセットします(ポイントマンのこと)。Xはその外側の斜め後ろにセットします。
RTはTEの位置。
CLOSEはZがTEが5 Yds離れた位置にセットします。

Y LTはモーションのこと。Yが左にモーションするだけ。

P14 WANDA MANは「WANDA MANというInside Zoneのルールでプレイアクションのブロックをしなさい」という意味です。PがPAP、14がInside Zoneのブロッキングルール、WANDA MANがInside Zoneのプレイ名です。

X DAGGERは実際のパスコースです。Daggerコンセプトというパスがありますが、XがそのメインとなるDeep Dig、49ersではDoverというルートを走ることになります。

Pass

[11] SOUTH RT CLAMP 2 JET F BRANCH BOW

[11] SOUTH RT CLAMPはフォーメーション。先ほどのSTACKと違いXがポイントマンとなります。
CLAMPはYがLOSからオフしてZがポイントマンとなること。Zはフォーメーションのコアから5 Yds離れます。

2 JETはパスプロテクションのルールです。いわゆるJET Protectionのことで、スライドコンボのルールです。今回はプロテクションは割愛しますが、別の記事で49ersのプロテクションを基にした記事を書いていますので、そちらを参考に。

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BOWはBasicとArrowというルートの名前を合体させたものです。
これだけ言えば全員のルートを表すことになります。誰がどのルートを走るかはいちいち説明せずともプレイコールでそれぞれのルールが決まります。

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